僕は村上春樹氏の小説を昔はたくさん読んでいましたが、いつしか手に取らなくなってしまいました。『中国行きのスロウ・ボート』『カンガルー日和』『回転木馬のデッド・ヒート』などの初期短編集なんかは、大学のころ何度も読んだものもあります。『羊をめぐる冒険』を最初読んだとき、「この感動は以前経験しているな?」と疑問をもって、しばらくして『長いお別れ』ではないかと確信して、それを指摘している評論はなかったか探した覚えがあります。それは謎解きミステリの謎を明かすようなものですから誰も書かなかったのかな、と当時結論づけました。
本書ではその二つの作品の関係を述べているところがあります。それにしても『長いお別れ』の魅力って何なんでしょうか? 男同士の友情では決してないんですよね。やはりそれをうまく取り入れたのが『羊をめぐる冒険』のような気がします。人間って時間とともに変わるものであって、それでいいんだと言っているような気がするんですよね。
本書は、小説家にまつわるエッセイ集です。本人のあとがきにも書かれているように、今まで他の媒体で書かれていたことを改めて詳しく的確にしたような感じがします。そんななかで本書で興味深かったのは、村上作品がどのように翻訳されていったかです。かなり意図的にこのようにしたいと思って、編集者や出版社でなく作家本人が一人で行動して翻訳出版を依頼した経緯が書かれています。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/09/28
- メディア: 文庫
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- 作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04/01
- メディア: 文庫
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