hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『職業としての「編集者」』片山一行、エイチアンドアイ、2015

本書のカバーに『ビジネス書の「伝説」を超えられる!』と書かれている通り、主にビジネス書の編集のためのノウハウ本。私も広い意味でマニュアル本を編集しているので非常に勉強になりました。実はこういうノウハウは本を読んでも、あまり身につなないもの…

『チャイナタウン』S・J・ローザン、直良和美訳、創元推理文庫、1994、1997ーー旧来のハードボイルド小説の文法に則ったデビュー作

私立探偵リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第1作目の作品。若い女性と年上の男性の私立探偵コンビが交互に語るミステリと書評で読んで、あのディック・ロクティのつまらなかった『眠れる犬』に近いものと思い避けていたのですが、試しに一冊読んでみる…

『危機の宰相』沢木耕太郎、文春文庫、2006、2008ーーミステリのようなノンフィクション

池田勇人を中心にしたノンフィクション。「所得倍増」計画はどのように立ち上がっていったかをミステリのように解き明かしていく。 ノンフィクションというのは、事象を考え、文献を読み、取材によって新しい情報を得て、それを取捨選択し再構成していくもの…

『虎の影』マイクル・コリンズ、水野谷とおる訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ1349、1972、1980ーー戦車と虎の影

隻腕私立探偵ダン・フォーチューン・シリーズ第5作目の作品。しかし翻訳は3番めにされているということは、前々作、前作よりも評価されてのものなのか、さらに帯に「ニューヨーク・タイムズ」の「複雑なプロットを見事にまとめた傑作」と書かれていること、…

『BLUE GIANT SUPREME (6)』石塚真一、ビッグコミックススペシャル、2018

最近、大人買いしました。一種の天才物語ですね。天才物語といえば、山岸凉子氏や曽田正人氏ですが、ずいぶん異なります。それだけでも本作の意義はあります。もう少し悪人というか、清濁併せ呑むキャラクターがないのが物足りない。みな同じキャラクターに…

『漫画家本vol.9 細野不二彦本』少年サンデーコミックススペシャル、小学館、2018

細野不二彦さんのインタビュー集。書店で『あどりぶシネ倶楽部』『うにばーしてぃBOYS』『BLOW UP!』が別枠でインタビューされているのを見てすぐさま購入しました。本書の編集さんの意図にのせられたわけです。 細野さんといえば、『さすがの猿飛』があって…

『あなたを愛してから』デニス・ルヘイン、加賀山卓朗訳、ハヤカワ・ミステリ1933、2017、2018ーーいわゆるロマンス小説風サスペンスミステリなのだろうか

ルヘインの新作ですが評判が良いようで、若い女性を主役にしていて、いわゆるロマンス小説風サスペンスミステリなのだろうか。あまりこういうのを読んだことがないからわからん、と思いつつ、『そしてミランダを殺す』と同じ雰囲気をもっている。このような…

『家蝿とカナリア』ヘレン・マクロイ、深町真理子訳、創元推理文庫、1942、2002

ヘレン・マクロイの全28長編作中、第5作目なので初期の作品。主人公は精神分析学者のベイジル・ウィリング博士。 マクロイはサスペンス作家だと思っていたので、本書の謎解きど真ん中ぶりには驚きました。 内容はというと、ある演劇劇場の公演中、その登場人…

『ソロモンの偽証』宮部みゆき、新潮文庫、2012、2014ーー『アクロイド』の一歩先を進むミステリ

宮部みゆき氏の文庫にして6冊の長編ミステリ。12月25日の雪あかりの朝、一人の男子中学生の死体が学校で発見された。警察により自殺として処理されたのだが、彼の死は同級生の3名の不良によって学校の屋上から突き落とされて殺されたという告発状が学校、担…

 『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン、務台夏子訳、創元推理文庫、2015、2018ーー殺人は癖になるのか

書評などで評判がよかったサスペンスミステリ。 誰もが思う通り、空港で出会った男女がそれぞれ交換殺人を検討するところからはじまるように『見知らぬ乗客』に似ています。 もう少しキャラクターが立っていればよかったのですけど、でもそうするとリアリテ…

『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』カラー、東宝、庵野秀明、グラウンドワークス、2016ーー今後エヴァがどう変化するかが愉しみになった

映画『シン・ゴジラ』のメイキング本。「庵野総監督による企画メモやプロット、脚本(準備稿、決定稿、最終決定稿)、各クリエイターのデザイン画やイメージボード等を網羅して収録、庵野秀明、主要スタッフインタビュー」が収録されています。高価格ですが、…

『天使と罪の街』マイクル・コナリー、古沢嘉通、講談社文庫、2004、2006ーー連続殺人、暗号、捜索、犯人の追跡など盛りだくさんのエンタテインメントだけど

刑事 "ハリー・ボッシュ" シリーズ第10作目の作品。コナリーは、作品順に読むのが難しく飛び飛びになっていまっています。 コナリーの作品については、以前から書いていますが、ストーリーもキャラクターも面白いものの、わたしは割と作品としては否定的でな…

『ユニクロ潜入一年』横田増生,文藝春秋,2017ーーアルバイトに経営の視点は必要か?

仕事が忙しくて本は読んでいたものの感想を書くまではエネルギーが残されていませんでしたが、ようやく3冊分の編集作業が終えましたので、心の余裕が生まれました。とはいえ、後ろに受け流してしまった仕事が手元に残っているのですが……。そんな状況の私にと…

『アメリカ銃の秘密』エラリー・クイーン、越前敏弥、国弘喜美代訳、角川文庫、1933、2014ーーフェアでないことをフェアにしようとした作品

「国名シリーズ」の第6作めの作品。わたしはミステリをクリスティから謎解き小説を広げ、それからハードボイルド、冒険小説などに移っていったのですが、謎解き小説中心時代でクイーンは半分ぐらい読んで通り過ぎてしまいました。ですので、「国名シリーズ」…

『憎悪の果実―私立探偵ジョン・タナー』スティーヴン・グリーンリーフ,黒原敏行,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1999/2001ーータナーは3度カマをかけて捜査する

私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第13作目の作品。あと残りが少なくなってきました。本シリーズは、謎解きと意外な犯人がきちんと盛り込まれていて、ミステリとして正統派の貴重なシリーズだと思います。本書もまさしくそのような作品です。 タナーの入院先…

『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいー人生100年時代の個人M&A入門』 三戸政和、講談社+α新書、2018

前回までフリーランス関係書3部作のような形で読んでしまいましたが、今回は偶然ですがちょっとしたスピンオフになりました。会社をもつということは、立派なフリーランスの一形態ですよね。 ちょっと前に、知り合いの印刷会社の社長さんに「印刷業界はやっ…

『フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』竹熊健太郎、ダイヤモンド社、2018 ーーフリーランスを一生持続していくということ

フリーランスを知る本の第3弾です。竹熊氏のフリーランスとしての遍歴と他のフリーランスとしてうまく乗り切ることができている人へのインタビューが紹介されています。なぜ40歳から仕事が減るのかという疑問ですが、まあそのとおりのことが書かれており、…

『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』山田竜也、日本実業出版社、2018

アマゾン検索で引っかかってタイトルだけで購入。著者はWebマーケティングを専門とする人で、サラリーマンを3年半だけでフリーランスとなっています。内容は著者の経験に基づいたフリーランスの指南書。この経験に基づいたというところがミソで、その点が説…

『仕事に能力は関係ない。ー 27歳無職からの大逆転仕事術』中川淳一郎,KADOKAWA,2016

著者の経験をもとにして、フリーランスで仕事をとり、どのようにして生きていくかを語ったもので、今の私には非常に面白かったですね。ギャラについて、例えば『〇〇』という雑誌で1ページ編集すると5万円フリーの編集者に示されていて、ライター、イラス…

『隣接界』クリストファー・プリースト,古沢嘉通,幹遙子訳,早川書房,2013,2017

プリーストの新作で昨年評価されたようです。私にとっては『奇術師』『魔法』『双生児』に続く4作目です。集大成的な作品と評価されており、確かに奇術師、双生児が出てくるし、そう言われてみればそうです。しかし話は最後まで謎でした……。 隣接界 (新☆ハヤ…

『魔女が笑う夜』カーター・ディクスン、斎藤数衛訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、1950、1982ーーカーだから許されるトリック

カーの24作目の作品。探偵ヘンリー・メリヴェール卿(H・M)が登場する第20番目の長編作品。田舎村で起こった無差別中傷手紙事件、それによる自殺、密室人間消失事件を内容としています。 イギリスの古く伝統のある村で、匿名で無差別に村人の根の葉もない嘘…

『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』岡田麿里,文藝春秋,2017

アニメの脚本家・岡田磨里氏の自伝。不登校の時代から脚本家になるまでの軌跡を記しています。私としては、脚本家になるための一例として、または岡田氏の脚本のもとになるものとして、非常に面白く読めました。 アニメだけではなく、脚本ありきではなく、監…

『ルポ 消えた子どもたちー虐待・監禁の深層に迫る』NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班,NHK出版新書,2015

現代社会において「消える」というのはどういうことか、がわかります。映画の『誰も知らない』を想像していましたが、本書では主に自宅監禁されていた子どもたちのことをルポしています。どのような事例があるのか、件数はどのくらいなのかを示し、NHKのテレ…

『屍人荘の殺人』今村昌弘,東京創元社,2017ーー今まで読んだことのないミステリ

「デビュー作にして前代未聞の3冠! 『このミステリーがすごい!2018年版』第1位、『週刊文春』ミステリーベスト第1位、『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位」という評価にして、何十万部も売れているベストセラー、そして、ラジオで東京創元社の編集者さ…

『悪いうさぎ』若竹七海,文春文庫,2004ーー私立探偵小説かと思わせた強烈なスリラー

私立探偵・葉村晶シリーズの第2作目・第1長編。『さよならの手口』『静かな炎天』が明らかに私の好きな海外ミステリの影響を受けていました。 2004年とずいぶん前の作品で、冒頭の葉村の心理描写がキンジー・ミルホーンの女探偵シリーズに似ています。 中途…

『 テヘランからきた男―西田厚聰と東芝壊滅』児玉 博,小学館,2017ーー東芝はなぜ凋落したか

元東芝社長についてのノンフィクション。新聞か何かの書評で気になって手に取りました。私は企業物や経済物などのビジネス書については、まったくの門外漢なので、東芝はアメリカの原発企業を高値で買い取って大いなる負債を抱えて倒産しそうになったところ…

『爆走社長の天国と地獄―大分トリニータv.s.溝畑宏』木村元彦,小学館新書,2010,2017ーーやはり間違っていたのではないだろうか?

一言でいえば傑作です。Jリーグに興味をもっている人には必読というか、一気に読まされてしまうだろうと思います。 読んでいて始終感じたのは、やっぱり溝畑氏のやり方は間違っていたのではないだろうか、という問題というか、違和感です。 「物事」を成し遂…

『完全恋愛』牧 薩次,小学館文庫,2008,2011ーー2009年度「本格ミステリ大賞」受賞作

辻真先氏の謎解きミステリ。2009年度「本格ミステリ大賞」受賞作で、2009年「このミステリーがすごい!」第3位、2009年「本格ミステリ・ベスト10」第3位。 タイトルは「他者にその存在さえ知られない罪を/完全犯罪と呼ぶ/では/他者にその存在さえ知られない…

『職業としての小説家』村上春樹,スイッチ・パブリッシング,2015ーー小説と小説家にまつわる話

僕は村上春樹氏の小説を昔はたくさん読んでいましたが、いつしか手に取らなくなってしまいました。『中国行きのスロウ・ボート』『カンガルー日和』『回転木馬のデッド・ヒート』などの初期短編集なんかは、大学のころ何度も読んだものもあります。『羊をめ…

『13・67』陳浩基,天野健太郎訳,文藝春秋,2014/2017ーーどんでん返しが冴えわたる短編群

昨年の海外ミステリランキングの上位に挙げられた中国(香港)警察ミステリ。 ロー警部が関わる事件をもとにした6つの短編(というよりも中編)を2013年から1967年までさかのぼって収録されています。その6つの短編がそれぞれ謎解きミステリが濃く一つの短編…