ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

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『三人の名探偵のための事件』レオ・ブルース、小林普訳、扶桑社ミステリー、1936、2017ーー密室、3人の名探偵による多重解決、どんでん返しなど探偵小説のお約束の要素がてんこ盛り

イギリスの1930年代にデビューしたミステリ作家レオ・ブルースのデビュー作。作風はイギリスミステリ黄金時代そのもので、シリアスではないユーモアミステリです。私は初読で、今までに読んだ中では、殺人をゲームとして扱っているという点で、バークリー、…

『殺す者と殺される者』ヘレン・マクロイ、務台夏子訳、創元推理文庫、1957、2009ーーむしろ2000年以降に読んだほうが面白い

ヘレン・マクロイ全31作中17作目の作品。後期の作品かと思っていましたが、意外と中期の作品で、おそらく当時としては野心的で、ここまで翻訳が遅れたことのは意外性の極限を狙って滑ってしまったが、現在改めて読むと面白さを感じることができる作品といえ…

『静かな炎天』若竹七海,文春文庫,2016――貴重な私立探偵小説

私立探偵・葉村晶の「青い影」「静かな炎天」「熱海ブライトン・ロック」「副島さんは言っている」「血の凶作」「聖夜プラス1」とタイトルの6つの短編をおさめた短編集。 私立探偵ミステリは、刑事ものや謎解きなど他のミステリに比べて少なくなってきてい…

『笑う男』ヘニング・マンケル,柳沢由実子訳,創元推理文庫,1994,2005ーー面白さが高村薫の初期の合田シリーズと似ている

非常に面白い小説でした。久しぶりです。ネットを中途でやめて続きが気になって読んでしまうなんて。20年以上前の小説とは思えません。とにかくキャラの描写のレベルが高く、コナリーと比べても素晴らしいのですよ。主人公の父とのコミュニケーションや警察…

『生か、死か』マイケル・ロボサム,越前敏弥訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,2014,2016 ☆☆☆☆

作者はオーストラリアのベテラン作家で自国ではこれまで賞を受賞し、本作で英国推理作家協会賞ゴールド・ダカー賞、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞最終候補となったそうです。 主人公は現金輸送車襲撃事件の犯人として逮捕された男、オーディ・パーマ…

『森を抜ける道』コリン・デクスター、大庭忠男訳、ハヤカワ ポケット ミステリ、1992、1993ーーなぜ失踪した女子学生を探す詩が送られてきたか?

コリン・デクスターのモース主任警部シリーズ・全13作中に第9作目の作品。残りは少なくなってきました。本作は、英国推理作家協会賞ゴールド・ダカー受賞作ということは、トップの作品ですね。トリックそのものは、そういう作品です。 休暇でホテルに滞在し…

『さよならの手口』若竹七海,文春文庫,2014――事件の触媒としての探偵

昨年、各種ベストテンで好評を得た女性の私立探偵を主人公にした小説です。なかなか私立探偵小説は評価を得ることが難しいのですが。読んでみて、なるほど、と思いました。 読者と生活レベルが等身大的であり、欠点もあるけれど基本的に明るい、好感を抱く主…