ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

新書

『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』東 浩紀,中公新書ラクレ,2020ーー組織を運営するには身体性がなくてはならない

『ゲンロン』という雑誌は知っていて,書店で手に取って「難しくてわからん」といったままで,本書の署名やインタビューから,てっきり出版社盛衰記だと思っていたけど,まったく違く内容だったにもかかわらず,一気に読むことができて,非常に面白かった。…

『貧困女子のリアル』沢木文、小学館新書、2016

貧困というと生まれや環境からどうしようも対策を立てようもないものを浮かべますが、本書はそのなかの一部を記した11名のインタビュー・ルポで、誰もが一歩間違えれば陥るかもしれない事例でしたので、非常に興味深かった。筆者が女性のためか、男性著者の…

『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいー人生100年時代の個人M&A入門』 三戸政和、講談社+α新書、2018

前回までフリーランス関係書3部作のような形で読んでしまいましたが、今回は偶然ですがちょっとしたスピンオフになりました。会社をもつということは、立派なフリーランスの一形態ですよね。 ちょっと前に、知り合いの印刷会社の社長さんに「印刷業界はやっ…

『騙されてたまるか―調査報道の裏側』清水潔,新潮新書,2015

『桶川ストーカー殺人事件―遺言』『殺人犯はそこにいる』の清水潔氏が、自ら行った調査報道について、コンパクトに示した新書。面白かったのが、清水氏が三人称では書けず、一人称でどうにか書けるようになったといっているところ。 騙されてたまるか 調査報…

『二階の住人とその時代―転形期のサブカルチャー私史』大塚英志,星海社新書,2016

大塚英志氏が漫画家を目指しつつ、徳間書店のマンガ雑誌の編集者のアルバイトに誘われ、2年間ぐらい働いていたときの、『アニメージュ』を中心にどのようにオタクの「評論」文化が作り出されてきたかを自身の経験や見聞きしたことを交えて語ったもの。あの時…

「特集 2016新書大賞」『中央公論 2016年 03 月号』2016

毎年行われている、新書大賞ですが、すっかり忘れていました。こういうのは、なるべく追っかけておきたいですね。 まあ毎年書いていることですが、最近の新書は読み応えがあるものがなく、もっとある事柄の基礎文献となるものが欲しいです。昔のリメイクでも…

『35歳からの海外旅行<再>入門』吉田友和,SB新書,2014ーー読ませる売れる文章

こう仕事で忙しいと、一年ぐらい仕事を休んで、旅行に行きたいという欲望が止まりません。そういう人を読者対象にした新書なんでしょうね。まんまと引っかかってしまいました。 この著者の作品は何冊めかなんですけど、中身がないけど、読ませる文章ですよね…

「発表!新書大賞2015」『中央公論』2015年 03 月号,中央公論新社,2015

内容は以下の通り。新書はたまに傑作が出るからチェック用として読む。専門分化している学問の入門書こそが新書の役割だと思うのですが、そういうのはこのようなランキングには入らないんでしょうね。 昨年の一位が『里山資本主義』で今年が『地方消滅』とい…

『コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと』川上量生,NHK出版新書458,2015

ネット上の複数の書評による評判を読んで、私が昔から考えていたことに似ているのではないかと思って、池袋ジュンク堂書店の新刊コーナーで購入しました。 面白いミステリ小説と面白くないミステリ小説、面白いアニメと面白くないアニメなどは、どのような違…

『荒木飛呂彦の漫画術』荒木飛呂彦,集英社新書,2015

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者による漫画の描き方のマニュアル本。本書では、その内容を『「王道漫画」を描くための「黄金の道」を示しているのですが、荒木氏の作風から鑑みるに、少し違和感をもちました。荒木氏が黄金の道が大切だと繰り返し述べている…

『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』舛本和也,星海社新書,2014

作者はアニメスタジオのトリガーのプロデューサー。アニメ制作においては、演出、作画監督に並ぶアニメの質に重要な役割にもかかわらず、あまり語られてきませんでした。本書はアニメの制作進行の役割とマニュアルを解説したものです。 私の興味としては、他…

『最貧困女子』鈴木大介,幻冬舎新書,2014

昨年の発行直後からネット上などで話題にあげられていた新書です。本書は「最貧困女子」を「セックスワーク(売春や性風俗)で日銭を稼ぐしかない」貧困女子をテーマにしたもので、その原因を「慎重」に解説しています。 筆者は、低所得を前提に「家族の無縁…

『ちばてつやが語る「ちばてつや」』ちばてつや,集英社新書,2014

ちばてつや氏のデビューから今のところの最後の作品までの自作解説集。これは、たぶんですが、『ちばてつや全集』刊行の時に一冊一冊ちば氏が自作解説をおまけで付けていましたが、それらをまとめたもののようです。できればまとめることをせず、そのまま転…

体験が感覚を変える――『日本人には二種類いる――1960年の断層』岩村暢子、新潮新書、2013

『普通の家族がいちばん怖い』の岩村氏の1960年以前に生まれた人、1960年以降に生まれた人の生育・社会などの環境による「体験」が全く変わってしまったため、まったく異なる日本人のタイプが存在することを論理展開した本です。 期待して読んだのですが、19…

『仮面ひきこもり――あなたのまわりにもいる「第2のひきこもり」』服部雄一、角川oneテーマ21,2014

池袋ジュンク堂の1階の新刊コーナーに売れている本の一つとして置かれていた新書です。ジュンク堂の新刊コーナーは新刊を出版したからといって無条件に置かれるわけではないんです。前著がベストセラーになったか、賞を受賞したか、書評などで評判を得たか…

『ヤンキー経済――消費の主役・新保守層の正体』原田曜平,幻冬舎新書,2014

ネット上で評判になった新書。135名のヤンキー層にインタビューして、いったい彼らがどのように生活を消費しているか、調査したものです。著者の目的は、「かつてのヤンキーが変容した形としての新保守層=マイルドヤンキーの実態と嗜好を明らかにします。ま…

『日本人はこれから何を買うのか?――「超おひとりさま社会」の消費と行動』三浦展,光文社新書,2013

2030年以降、全国的な中高年の1人暮らしの増加、大都市での高齢者の1人暮らしの増加、50歳以上の未婚・死別・離別の増加など「超おひとりさま社会」が出現するに当たって、その前兆を見せている現在、消費がどのように変化するのかを、マーケティングの視…

『1日で学び直す哲学――常識を打ち破る思考力をつける?』甲田純生,光文社新書,2013

購入きっかけは書店で見かけて、アマゾンの評価が良好であるのを確認してからです。 著者は広島国際大学所属で、晃洋書房やミネルヴァ書房など専門書出版社で複数の著作をもつ哲学者。編集者はそれらの著作を読んで、新書も書けるのではないかと判断したんで…

『3日もあれば海外旅行』吉田友和,光文社新書,2012

発売当初、書店で見かけて気になっていた新書です。それは長期の休みはなかなか取れないものの、土日合わせて3日ならば仕事のスケジュールを計画的に進めることができれば、結構計画的に休日がとれるので、その間だけでも旅行ができるなあと思っていた矢先で…

『編集者の仕事―本の魂は細部に宿る』柴田光滋,新潮新書,2010

多く出回っている編集者の仕事についてのエッセイは、どのように企画があがってきたかを記すものが大半ですが、本書は元新潮社の文芸をメインとした編集者が原稿を受け取ってから書籍にするまでを記したものです。「すべては判型から出発する」「頁はどこか…

『武器としての決断思考』瀧本哲史,星海社新書,2011

星海社の新しい新書シリーズの第1弾。新聞かウェブの書評でベストセラーになっているというのが頭に引っかかって、たまたま書店で見かけて購入したもの。著者は知りませんでしたが、東大→マッキンゼー→投資家という経歴らしい。内容は、人生において選択に迷…

『社会を変えるには』小熊英二,講談社現代新書,2012

著者の小熊氏は経歴をみると、東大農学部卒後、出版社勤務の後に、大学院に入ったと記述されています。人文系マイナー出版社かなと予想していましたが、ウィキペディアに公開されていましたね。ある意味王道ですね。大学院に入り直した編集者を二名知ってい…

『錯覚学─知覚の謎を解く』一川誠,集英社新書,2012

「体験された内容と実際とがことなることは、総称して錯覚(illusion)と呼ばれる。また、視覚に関する錯覚は錯視(visual illusion)、事柄についての認識が客観的事実と異なることを錯誤(mistake)と呼ぶ」(6〜7頁より)。本書は、どのような錯覚がある…

『できそこないの男たち』福岡伸一,光文社新書,2008.

福岡伸一氏の科学ノンフィクション。精子から遺伝子レベルまでの発見を通して、生物がメスからオスに変化したプロセスを述べた書。高校時代の生物の授業を思い出しました。タイトルは、生物のデフォルトの性別は女であり、男は一つの遺伝子によって生物的に…

『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎,講談社現代新書,2008

理性の限界とは、人間が認識しうる物事はどこまでなのかを議論することらしい。本書は、シンポジウム形式で、会社員、数理経済学者、哲学史家、運動選手、生理学者、科学社会学者、実験物理学者、カント主義者、論理実証主義者、国際政治学者などが議論した…

『東京は郊外から消えていく!――首都圏高齢化・未婚化・空き家地図』三浦展,光文社新書,2012――はテーマと調査がクロスしている。

久しぶりの三浦氏の新書。テーマが面白い。おそらくは三浦氏の興味の赴くままテーマにしているのでしょう。それそのものが市場と一致しているような気がします。また、三浦氏の著書は、総務省の国税調査や社会保障・人口問題研究所などパブリックな研究調査…

『サブカルで食う――就職せず好きなことだけやって生きていく方法』大槻ケンヂ,白夜書房,2012

大槻ケンヂ氏の発売時にはネット界隈で話題になった語り下ろし新書。メインタイトルはともかく、サブタイトルが魅力的ですね。「就職せず好きなことだけやって生きていく」なんて、趣味をもっている人間ならば、夢みたいな話でしょう。 本書はまず、冒頭でサ…

『サッカー代理人』ロベルト佃,日文新書,2011.

最高の始まり、最悪の終わりのオリンピック、そして本日のキリンチャレンジカップ・ベネズエラ戦、そしてJリーグと相変わらずサッカーは続いています。今年は浦和レッズがまったくストレスにならないので快適ですね。昨年まではイライラしていてスタジアムな…

『10年メシが食える漫画家入門――悪魔の脚本 魔法のデッサン』樹崎聖,講談社アフタヌーン新書,2009

偶然、Amazonのレビューを読んで、あまりの絶賛の内容に興味を持っていた新書です。先日、近場のブックオフで新書の棚を総ざらいしていたら、タイトルが目に飛び込みました。 全二章の構成になっていて、第一章が「悪魔の脚本術」、第二章が「魔法のデッサン…

『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』伊藤隆行,集英社新書,2011

上記の新書大賞で第8位に選ばれたのが本書。「愛の貧乏大作戦」「怒りオヤジ3」「やりすぎコージー」「モヤモヤさまぁ〜ず2」などを手がけたテレビ東京のプロデューサーが著者。聞き書きと思われる軽い文体のなかに、いかに自分の好きな企画を通し、実現さ…