ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

新書

『出版大崩壊――電子書籍の罠』山田順、文藝春秋、2011

オビの表4が「既存メディアの幻想を打ち砕く!」で編集担当者の趣味がわかりそうなのが楽しい。タイトル通り、これまでの出版システムが崩壊するであろうというもの。電子書籍も日本では厳しいのではという著者の考えで、うなずくところ多しです。音楽でも映…

『脳の科学史―フロイトから脳地図、MRIへ』小泉英明,角川マーケティング,2011

著者はMRIやfMRIなどを開発してきた脳科学の第一人者。私も学会などで何度か講演に参加してきて、一度は著者として依頼してみたいと思っていました。最初の講演内容は忘れてしまいましたが、感動したことだけは憶えています。 本書は、脳科学の歴史を俯瞰し…

『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史』有馬哲夫、新潮社、2008

CIAに現存する「正力ファイル」に記録された、日本にどのようにして原発が導入されたか、その経緯を述べたもの。佐野眞一氏の傑作『巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀』から引き続いて読むと面白さ抜群です。『巨怪伝 外伝』といってもよいでしょう。 …

『JAL崩壊』日本航空・グループ2010、文藝春秋、2010

日本航空の現役・OBの客室乗務員が、社内の実情を暴露したものとして、面白そうかなあと思い購入したものの、この程度の崩壊状況はどの会社にもあることじゃないの、と進めば進むほど訝しく感じました。まあ、爆笑本です。複数の著者が執筆しているのですが…

『物語の命題―6つのテーマでつくるストーリー講座』大塚英志、アスキー新書、2010

大塚氏の一連のストーリー作りマニュアルの一冊。マニュアル本や学習書というのは、学ぶ方のレベルに合わせなくてはならないため、そのレベルではない人にとっては役に立たず批判を浴びてしまうものですが、本書はストーリー作成の初心者のためのものとなっ…

『凡人として生きるということ』押井守、幻冬舎、2008

『勝つために戦え!〈監督篇〉』と『勝つために戦え!〈監督ゼッキョー篇〉』がやけに面白く、今でもたびたびつまみ読みをしているので、それに似た本書を購入したわけで。オヤジ論、自由論、勝敗論、セックスと文明論、コミュニケーション論、オタク論、格差…

『仕事道楽―スタジオジブリの現場』鈴木敏夫,岩波書店,2008

スタジオジブリのプロデューサーの鈴木敏夫氏のジブリが設立した経緯と現在までの過程を自らの仕事と重ね合わせて、語り下ろしたもの。宮崎氏・高畑氏との出会いとちょっとしたジブリの歴史、『アニメージュ』編集長の尾形氏、徳間書店社長の徳間氏のことを…

『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』佐々木俊尚,筑摩書房,2011

タイトル通り、既存のマスコミのみならず、ツイッター、フェイスブックなどによる情報のやりとり・統合・つながりが行われ、それが力をもつようになる、いやすでになっているというもの。著者には申し訳ないけれど、主張は全面的に賛同しつつ、これはやっか…

『「情報創造」の技術』三浦展、光文社、2010/05

本書は三浦氏版・知的生産の技術。知的生産を情報創造といいかえているところが三浦氏らしいですね。面白かったのは、情報分析のコツとして「分析するときは「短期」「中期」「長期」に分けて考える」と解説し、それに加えて「火薬」「引き金」に分けて整理…

『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』藻谷浩介,角川書店,2010

「上半期新書ナンバー1」というオビがあったのと、何よりも著者がずいぶん前に『中央公論』で発表していた論文に感銘を受け、藻谷という人は評判にはならないかもしれないけれど、いつか素晴らしい書籍を発表するだろうと覚えていましたので池袋ジュンク堂…

『小説家という職業』森博嗣,集英社,2010

森氏の小説家としての方法論と小説家をとりまく出版ビジネスについて書かれたエッセイ集。刺激的ではあるけれど、森氏だからこそだよなあ、森氏しか当てはまらないと嘆息すること多い。森氏は小説を発表する際に、1作目よりも2作目、3作目のほうが面白く…

『2011年新聞・テレビ消滅』佐々木俊尚,文藝春秋,2009

先日のUstreamの孫正義×佐々木俊尚の対談や石川さんのマンガペン入れの生放送が、視聴者数が数千から一万台になり、それで成立してしまっている状況が、出版で言えば、ああまるで書籍の単行本か、専門雑誌のような位置付けだなあ、なんて思うんです。まだま…

『仕事するのにオフィスはいらない』佐々木俊尚,光文社新書,2009/07

昨年、本書が発行され、書店でパラパラと立ち読みをしたとき、「ふうん、こういう人もいるんだな。いずれ僕もこのようになっていくのだろうけど、まだまだ先だな」と判断していたのです。しかし最近思うところがあって、本書を読みたいと池袋の書店をジュン…

『ハイブリッドワーカー――会社勤めしながらクリエイティブワークする』ヨシナガ,講談社,2009

「講談社アフタヌーン新書」という新書レーベルのひとつ。この新書はライターに依頼して量産しているけれど、どのくらいの部数が損益分岐点なのでしょうか? 新書で分量が少ないので一般四六書籍よりは、印刷・製本代などの製作費は安くつくのでしょう。 で…

『これが「演出」なのだっ――天才アニメ監督のノウハウ』大地丙太郎,講談社,2009/08

アニメ監督大地氏によるアニメ監督、演出論。まあ、「論」というほどではないけれど。最近、アニメを見るようになって、監督・脚本・演出・絵コンテ・作画監督などの役割がどのようになっているのか、それを知りたくて手にとりました。実際、大地監督作品は…

『日本辺境論』内田樹,新潮社,2009

内田樹先生による日本人論。一読して、うーんと唸ってしまいます。その通りかもしれないと同意するけれど「だったら一体どうしたらいいっちゅうねん」と困惑してしまいました。なぜなら、日本人の考え方は効率的なのだからそのままでよいのだと言っているの…

『実録闇サイト事件簿』渋井哲也,幻冬舎,2009

タイトル通り、闇サイトをもとにする事件を集めたルポルタージュ集。「闇の職安」名古屋OL拉致殺害事件、闇のハローワーク妻殺害未遂事件、なんでも屋サイト嘱託殺人事件、ネット掲示板家族殺害依頼事件、駆込寺殺人依頼事件などの殺人依頼サイト、自殺系サ…

『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』村山治, 奥山俊宏, 横山蔵利,朝日新聞出版、2008

前回までマンガが続いていましたが、今回は一転して久しぶりの新書です。新書といえば、このところベストセラーが現れず苦戦しているかな、もうブームは終わりかなと外野の立場から危惧したりしていたら、勝間氏のコミュニケーションの技術書や香山リカ氏の…

 『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』 下條信輔、講談社、1999

「脳は孤立した存在ではなく、身体を支配し、逆に身体に支配されます」(5ページより)という、いわゆる認知心理学(でいいのかな?)の入門書。「身体(姿勢、感覚器)を通した外界との相互作用の経験の総体=順応の過程」を意味する「脳の来歴」が重要で…

 『こんなに使える経済学―肥満から出世まで』 大竹文雄編、筑摩書房、2008

「なぜあなたは太り、あの人はやせるのか」「教師の質はなぜ低下したのか」「セット販売商品はお買い得か」「銀行はなぜ担保をとるのか」「お金の節約が効率を悪化させる」「解雇規制は労働者を守ったのか」などの問題について、27のケースごとに、経済学の…

 『新聞記者 夏目漱石』 牧村健一郎、平凡社、2005

本書の発行当時、さまざまな書評で好意的に取りあげられていたので、わたしは書名だけ記憶していて、書店や図書館の文芸評論のコーナーで軽く探してみたものの見つけることができなかったものです。先日、新書の棚で偶然見かけたときは、単行本だと思ってい…

 『空気の読み方――「できるヤツ」と言わせる「取材力」講座』 神足裕司、小学館、2008

小学館101新書の創刊8番目。 新書などのシリーズの場合、書店において、お客の目に付く場所に置いてもらったり、差しでもいいから長く置いてもらいたいものです。そのためには、そのシリーズの書店に置いてもらうスペースをとらなくてはなりません。 それに…

 『となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術』関根眞一、中央公論新社、2007

2007年の新書のベストセラー。クレーマーとはいったいどういう人をいうのか、クレーマーに対応するにはどうしたらよいか、を具体的に事例で示した本。ストーリー仕立てになっていて、めちゃめちゃ読みやすく、あっという間に読み終えることができます。とな…

 『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』山岸俊男、中央公論新社、1999

10年前の発行で少し古い新書だけど内容は面白い。タイトルでソンをしている。「安心社会」も「信頼社会」もワードからだけだと、その意味をきちんと把握できない。だから説教をしている内容じゃないかと勘違いしてしまう。 社会心理学的な分析を駆使した日本…

『家庭モラル・ハラスメント』熊谷早智子、講談社、2008

読売オンラインの「発言小町」が結構好きで時々読んでいます。メイン投稿者が2ちゃんなどとは異なり大人の女性が多く女性特有の考え方が、また、ほんの少しの情報から相談者の状況を推理していく過程が見られて面白い。時々傑作が見られることがあります。 …

『「狂い」の構造』春日武彦/平山夢明、扶桑社、2007(○+)

精神科医と幻想ホラー作家の「狂気」をテーマにした対談集。学究的なものじゃないので、気軽に読むことができます。てっきり、平山氏のカウンセリング的な要素が大きいのかと思ったら、そうではありませんでした。「狂い」の構造 (扶桑社新書)作者: 春日武彦…

『死因不明社会―Aiが拓く新しい医療』海堂 尊、講談社、2007(○)

『チーム・バチスタの栄光』の著者が書く新たな死亡診断システムを提唱しています。発売当時、さまざまな新聞・雑誌などでインタビューを受けていましたね。それだけ、社会問題として取り上げやすいテーマでありますし、現在の診断システムの惨さが際だって…

『調べる技術・書く技術』野村進、講談社、2008(◎)

短いものから長いものまで、身近なものから身近でないものまで、調べて文章にする、つまりノンフィクションの書き方を極めて分かりやすく説明したマニュアルで、このようなことを体系的に教えてもらってもいない、学んでもいない、観察して自己流にしていた…

『日本の偽書』藤原 明、文藝春秋、2004

日本の偽書 (文春新書)作者: 藤原明出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (20件) を見る 偽書とは、偽の歴史や事実を記述した書のこと。現在でもさまざまな偽書が書かれ売られているますが…

 『4-2-3-1―サッカーを戦術から理解する』杉山茂樹、光文社、2008(○+)

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)作者: 杉山茂樹出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/03メディア: 新書購入: 6人 クリック: 262回この商品を含むブログ (129件) を見る 本書はサッカーの戦術の一つである“布陣”についてのテキストといえる…