ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

ライトノベル

『砕け散るところを見せてあげる』竹宮ゆゆこ、新潮文庫nex、2016――少年が少女を助ける物語

竹宮ゆゆこ氏の新潮文庫2作目の作品。書店で見かけて、帯の文句と推薦文に惹かれて購入しました。「小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作」と編集者に書かせる作品なのか……と。 あまりじっくり進む内容ではないので、他の書籍を挟みながら、少しずつ読ん…

『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』三木一馬,KADOKAWA,2015――エンタメ編集者のビジネス書

この頃、編集者本の出版が増えているような気がします。あれとかこれとか……(すでに購入しています)。そんななかで本書は、電撃文庫でヒットを飛ばしているスター編集者の編集術をまとめたものです。 私の仕事内容とは異なりますが、少しでも参考になればな…

『 パーフェクトフレンド』野崎まど、メディアワークス文庫、2011

野崎まど氏の(おそらく)5作目の作品。野崎氏の架空の設定の中でアクロバットな論理展開の後にリドルミステリに落ちつくという特徴があります。さらに、とぼけた感のある非常に特徴的なキャラクターとギャグが備えてあり、決して重くはならない作風です。ち…

『小説家の作り方』野崎まど,メディアワークス文庫,2011

野崎まど氏の(たぶん)4作目の作品。タイトルからは小説の書き方物語のような印象を受けるけど、まったくいつもの野崎氏の作品。主人公は新人作家で、多分に野崎氏自身を思わせる若い男性。「この世で一番面白い小説」を書きたいと思っている。その彼にファ…

『死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死』野崎まど,メディアワークス文庫,2010

野崎まど氏の第3作目の作品。なんと言ったらよいか難しいが、『アムリタ』同様に、思考論理のみで展開する哲学的なミステリでした。突飛な哲学書や科学書はしばしばSF的な結論に行き着いてしまうときがあるけれど、それを小説にしたらこうなるという感じだろ…

爆笑するショートショート群――『独創短編シリーズ 野粼まど劇場』野崎まど, 電撃文庫,2012,☆☆☆☆

24の短編+ショートショートですが、落ちを重点的にしているわけではなく、設定と展開の奇妙さが面白いものとなっています。例えるならば、筒井康隆氏の短編でしょうか。現代の新しい文章や活字による笑いの方法の一つがここにある、と断言してもよいでしょう…

『三つ目がとおる』に似ているのが嬉しい――『舞面真面とお面の女』野崎まど,メディアワークス文庫,2010,☆☆☆

『[映]アムリタ』でデビューした野崎まど氏の第2作目の作品。新本格系のミステリで、フェアプレイを重要視してません。工学部の大学院生の男が、祖父が病床で死ぬ直前に記した遺言らしき文言の意味を解いてほしいと、叔父から依頼を受けた。その文言は「箱を…

天才を描く――『[映]アムリタ』野崎まど, メディアワークス文庫,2009,☆☆☆★

最近、派手ではないものの話題となるライトノベルを次々に発表し、SFでも評価を受けている野崎氏のデビュー作。私は、『本の雑誌』の若島先生の評価で気になりました。なんとなく自分の感性に合っている作家ではないかと。 本書は、天才監督の創る映画そのも…

『知らない映画のサントラを聴く』竹宮ゆゆこ,新潮文庫,2014

竹宮ゆゆこ氏の文庫書き下ろし新作。23歳の無職の女性が主人公のラブストーリーというよりも青春小説といったほうがよいと思う。新潮社では『とらドラ!』の社会人版のようなラブストーリーで注文したのかもしれないし、作者もその注文を受けたのだろうけど…

『ゴールデンタイム 8――冬の旅』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2014

ラブコメ・ライトノベルの第8巻にして完結巻です。最後になって、今までの(第1巻からの)伏線を回収して、見事に着地しています。途中で、このシリーズはいったいどこへ向かっていくのか首をひねりましたが、なるようになったと言うところですね。ゴールデ…

『ゴールデンタイム (7) I'll Be Back』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2013

10月よりアニメも始まっていますが、意外にも面白いですね。今期の他のアニメがファンタジーあるいはスポーツ物ばかりで、『ゴールデンタイム』のような学園物がないせいですかね。香子のキャラクターが嫌みになっていないので、丹念にキャラの心情を追って…

『ゴールデンタイム列伝 AFRICA』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2013

時系列的には、本編『6』と次に発行予定の『7』に当たる短編集。主人公がそれぞれ千波(と香子)の「AFRICA」、柳澤の「ユア・アイズ・オンリー」、さらに香子の「束の間の越境者」の3篇。まあまあ面白かったです。 しかし何故私がこのシリーズにイマイチの…

『“文学少女”と神に臨む作家』野村美月,ファミ通文庫,2008

文学少女シリーズ第7作目にして最終巻。それぞれの巻でそれぞれの登場人物にまつわる物語を語ってきたシリーズですが、いよいよ文学少女=天野遠子の物語で閉幕しました。このシリーズは不思議な魅力をもっていて、ドラマのカタルシスよりも、謎解きのカタル…

『ゴールデンタイム6―この世のほかの思い出に』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2013

前の巻で事故で終わってしまったところで、ハチクロと同じ展開でシリアスモードに入るのかなと思っていたら、本巻でコメディ+日常モードにきちんと戻って安心しました。というところで、私は本シリーズを見誤っていたのでしょう。『とらドラ!』のような作…

『ゴールデンタイム番外 百年後の夏もあたしたちは笑ってる』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2013

「ゴールデンタイム・シリーズ」の「番外」編。発売日とともに購入。わたしにとって、そのような小説はないので珍しい。 前回は「外伝」でした。本編からスピンオフの「光央の部屋」「百年後の夏もあたしたちは笑っている」「サマーナイトツアー」のコメディ…

『ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,電撃文庫,2012

さて、シリーズ4巻、スピンオフ1巻を経て、新刊の第5巻です。前巻で万里は香子と付き合うことを選択決定し平和な夏休みを過ごすのですが、なんとなく二次元くんと遊びに柳澤を誘ったところ用事があると断られて……。 万里の大学入学前の事故のこと、過去の記…

『ゴールデンタイム外伝――二次元くんスペシャル』竹宮ゆゆこ, 電撃文庫, 2012.

「ゴールデンタイム」シリーズのスピンオフ作品。本編では脇役の「二次元くん」を主役にした「二次元くんスペシャル」「二次元から愛」「二次元事変」「さらば二次元くん」の4編が収録されています。ラブコメの王道で、非常に面白いので、いろいろ考えさせら…

『“文学少女”と月花を孕く水妖』野村美月,ファミ通文庫,2008

文学少女シリーズ第6作目の作品。文学少女・遠子の友人の姫倉麻貴がメインとなる物語。 夏休みに学園の理事良の孫の姫倉麻貴の別荘に呼ばれた遠子先輩、そしてその遠子に呼ばれた心葉。例によって麻貴の絵画のモデルとしてだった。あるとき、その別荘の近辺…

『ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon't look back』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ, 電撃文庫, 2012

竹宮ゆゆこ氏の新シリーズ。過去の記憶が欠如している大学1年生の多田万里、途すぎる恋愛感情をもつ美人お嬢様の加賀香子の「青春ラブコメ」第4巻。二人は付き合うことになったのですが、万里の過去の記憶がまだら模様のように蘇り、その過去の記憶に振り回…

『ゴールデンタイム 第3巻 仮面舞踏会』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,アスキーメディアワークス,2011

竹宮ゆゆこ氏の新作。うーむ、新作を楽しみに待っているなんてこのシリーズだけだな。このシリーズは、『田村くんシリーズ』や『とらドラ!』と比べると、作者が何を狙いにしているか、いまいち伝わって来ません。少しもどかしい感じがします。 主人公の多田…

『涼宮ハルヒの分裂』谷川流, いとうのいぢ,角川書店,2007/『涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き)』谷川流, いとうのいぢ,角川書店,2011

涼宮ハルヒシリーズ最新作。『分裂』の発行が2007年、そして続編の『驚愕』が2011年と4年後にようやく発行されたものです。 ハルヒ・シリーズは人気があるわりには、ドラマというか、なんと言ったらよいか、派手な展開やアクションが多くありません。ハルヒ…

『ゴールデンタイム2 答えはYES』竹宮ゆゆこ, 駒都えーじ,アスキー・メディアワークス,2011/03

記憶喪失中の大学1年生の多田万里は、自称完璧なお嬢様の加賀香子に告白してふられた翌日から物語は始まり、大学入学後の履修科目の選択からサークル、飲み会と付き合うことになって、万里に焦燥感がつのるのだが……。まだ本編と言うよりもネタ振りの感じ。と…

『銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

本巻は、新銀河帝国の成立によりラインハルトはローエングラム王朝の初代皇帝となったところから始まったわけですが、地球教団のテロ行為、ヤンに対する監視人の暴走、首都の移転などが動き、大きな戦いになる予感を示唆するところです。銀河英雄伝説〈6〉飛…

『ゴールデンタイム 1』竹宮ゆゆこ,駒都えーじ,アスキー・メディアワークス,2010

待望の竹宮ゆゆこ氏の新作。つーか、オレ、どんだけ竹宮さんが好きなんだよ。発売日に購入して、読みかけのミステリを中断して、すぐに読み切ってしまうなんて。やっぱりねえ、竹宮さんの短所から長所まで、すべて許せちゃうんだよねえ。どうして、こう書き…

『“文学少女”と慟哭の巡礼者』野村美月, エンターブレイン,2007

文学少女シリーズ第5作目の作品。いよいよミウと再会する井上心葉くんです。シリーズ4作目まで読んでいて、ミウというのは心葉の影であり架空の人物ではないかと考えていたのですが、4作目の作者のあとがきで書かれていたとおり、心葉の初恋の人という形…

『とらドラ・スピンオフ! 3 俺の弁当を見てくれ』竹宮ゆゆこ,アスキー・メディアワークス,2010/04

『とらドラ!』の番外編短編集の3冊目。もうこれで終わりですかあ。あまりにも久しぶりの『とらドラ!』で最初は文体に慣れなかったのですが、一旦のめり込めば、面白さ全開でした。個人的には、能登×木原の「ラーメン食いたい透明人間」にやられちまったな…

『“文学少女”と穢名の天使』野村美月,竹岡美穂,ファミ通文庫,2007――耽美的なミステリ

文学少女シリーズ第4作目。相変わらずの事件に巻き込まれた心葉とその謎解きをする(ときどき間違うこともあるけれど)文学少女の物語。本作は、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』をモチーフに物語が進みます。 遠子は受験勉強のため文芸部を休部宣言す…

『銀河英雄伝説〈5〉風雲篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

フェザーン自治領を武力占領した帝国軍の最高司令官ラインハルトは、すべての宇宙を手中におさめようと、同盟軍への侵攻を開始し、まずフェザーン回廊を通過しイゼルローン要塞に向かった。首都はイゼルローン要塞にいるヤンに対し、ヤンの判断で行動して良…

『銀河英雄伝説〈4〉策謀篇』田中芳樹,東京創元社,1984→2007

銀河帝国からフェザーンに亡命した貴族のランズベルク伯とシューマッハは、帝国首都オーディンに潜入した。要人――7歳の皇帝を誘拐するのではないかと推理するラインハルト。それを密告してきたのはフェザーンの自治政府そのものであった。そのようなことを…

『銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇』田中芳樹,東京創元社,1984→2007

帝国宰相でもある22歳のラインハルトは、内政の整備を行い、貴族の特権を廃止し民衆に解放し支持を得た。そして、同盟軍の知将ヤン・ウェンリーがいる難攻不落のイゼルローン要塞に対して、“禿鷹の城”(ガイエスブルク)要塞にワープエンジンを取り付け移動…