ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

SF・ホラー

『三体』劉慈欣、立原透耶、大森望、光吉さくら、ワンチャイ訳、早川書房、2006、2019

久しぶりのSFです。わたしのSF歴は高校時代から、有名どころの作品を一通りではなく半分ぐらいかじってきた感じで、普通の人よりは読んでいる程度。例えば、『果てしなき流れの果てに』をまったく無情報(いま考えてみればすごい)で読んで、SFの醍醐味を味…

『隣接界』クリストファー・プリースト,古沢嘉通,幹遙子訳,早川書房,2013,2017

プリーストの新作で昨年評価されたようです。私にとっては『奇術師』『魔法』『双生児』に続く4作目です。集大成的な作品と評価されており、確かに奇術師、双生児が出てくるし、そう言われてみればそうです。しかし話は最後まで謎でした……。 隣接界 (新☆ハヤ…

『 パーフェクトフレンド』野崎まど、メディアワークス文庫、2011

野崎まど氏の(おそらく)5作目の作品。野崎氏の架空の設定の中でアクロバットな論理展開の後にリドルミステリに落ちつくという特徴があります。さらに、とぼけた感のある非常に特徴的なキャラクターとギャグが備えてあり、決して重くはならない作風です。ち…

『盤上の夜』宮内悠介,東京創元社,2012

表題作の短編「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞山田正紀賞受賞、それに加えて「人間の王」「清められた卓」「象を飛ばした王子」「千年の虚空」「原爆の局」の5短編を加えて短編集としたものが本書。本書で第147回直木賞候補、第33回日本SF大賞(これは「盤上…

『屍者の帝国』伊藤計劃, 円城塔,河出書房新社,2012

昨年話題になったSF小説。ミステリ関係の各種ベスト企画にも顔を見せていたので読みました。フランケンシュタインを生成する技術から屍者を生成する技術が生まれた世界が舞台。若かりしワトソンが密命を受けて、その技術の秘密を追って冒険するというもの。…

『マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気』『マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼』『マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮』冲方丁,ハヤカワ文庫JA,2003

SF大賞を獲得した近未来サイバーパンクSF小説。『ニューロマンサー』を中途で挫折したわたしには、荷が勝ちすぎました。筋は追えるものの面白さを十全に受け止めることができませんでした……。マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文…

『銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇』『銀河英雄伝説(8)乱離篇』

■『銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇』田中芳樹,東京創元社,2008 ■『銀河英雄伝説(8)乱離篇』田中芳樹,東京創元社,2008 先週から6巻・7巻・8巻を連続読み。まったく展開を知らなかったので、8巻のあのシーンには驚きました。まさか……という感じ。きちんと読ん…

『銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

本巻は、新銀河帝国の成立によりラインハルトはローエングラム王朝の初代皇帝となったところから始まったわけですが、地球教団のテロ行為、ヤンに対する監視人の暴走、首都の移転などが動き、大きな戦いになる予感を示唆するところです。銀河英雄伝説〈6〉飛…

『虐殺器官』伊藤計劃,早川書房,2007→2010

「ゼロ年代の最高のフィクション」というふれ込みの傑作SF小説。単行本発行時にきちんと読んでおけばよかったと思わせる作品。私は、SFというよりも、むしろ新しい世代が書く近未来冒険小説あるいはエスピオナージととらえました。そういう意味でミステリ小…

『粘膜人間』飴村行,角川グループパブリッシング,2008

第15回日本ホラー小説大賞長篇賞受賞作。僕はあまり日本のホラー小説は読まないけど――といっても、『パラサイトイブ』『黒い家』などベーシックなのは読んでるけどね――書評で気になった作品。 戦前戦中ぐらいのこと、二人の兄弟が一人の巨体で暴力的な義弟を…

『銀河英雄伝説〈5〉風雲篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

フェザーン自治領を武力占領した帝国軍の最高司令官ラインハルトは、すべての宇宙を手中におさめようと、同盟軍への侵攻を開始し、まずフェザーン回廊を通過しイゼルローン要塞に向かった。首都はイゼルローン要塞にいるヤンに対し、ヤンの判断で行動して良…

『銀河英雄伝説〈4〉策謀篇』田中芳樹,東京創元社,1984→2007

銀河帝国からフェザーンに亡命した貴族のランズベルク伯とシューマッハは、帝国首都オーディンに潜入した。要人――7歳の皇帝を誘拐するのではないかと推理するラインハルト。それを密告してきたのはフェザーンの自治政府そのものであった。そのようなことを…

『銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇』田中芳樹,東京創元社,1984→2007

帝国宰相でもある22歳のラインハルトは、内政の整備を行い、貴族の特権を廃止し民衆に解放し支持を得た。そして、同盟軍の知将ヤン・ウェンリーがいる難攻不落のイゼルローン要塞に対して、“禿鷹の城”(ガイエスブルク)要塞にワープエンジンを取り付け移動…

 『星新一―一〇〇一話をつくった人』 最相葉月、新潮社、2007

第29回講談社ノンフィクション賞、第28回日本SF大賞、第34回大佛次郎賞、第61回日本推理作家協会賞 評論その他の部門などを受賞したノンフィクション。作家の伝記+日本SF小説史+日本戦後史などさまざまな視点から愉しむことができます。 気になったとこ…

 『双生児』 クリストファープリースト, Christopher Priest, 古沢嘉通訳、早川書房、2002→2007

『魔法』『奇術師』においてミステリファンを魅了したプリーストの現在のところの最新長篇。第2次世界大戦後のイギリスとドイツを舞台にした歴史改変SF小説。 『魔法』『奇術師』は少なくとも2度は読みましたし楽しめたのですが、本書は正直その面白さがよ…

『アラビアの夜の種族?・?・?』古川日出男、角川書店、2006(○)

2002年発表の作品で、第55回日本推理作家協会賞・第23回日本SF大賞受賞作。推理作家協会賞を受賞したからといって推理小説というよりは、半村良の系譜を継ぐ、伝奇小説であり、そういう流れで受賞したのでしょう。アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)作者: …

 『魔法』クリストファー・プリースト、古沢嘉道訳、早川書房、1984・1985→2005(○+)

魔法 (ハヤカワ文庫FT)作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,古沢嘉通出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2005/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 63回この商品を含むブログ (88件) を見る 『奇術師』で大いなる評価を得たプリーストの幻想…

 『一角獣・多角獣』シオドア・スタージョン、小笠原豊樹訳、早川書房、1953→2005(○)

一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,小笠原豊樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2005/11メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 70回この商品を含むブログ (75件) を見る 復刊された異色作家短編集の第3巻。本巻…

『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック,友枝康子訳,早川書房,1974→1989(○)

流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K・ディック,友枝康子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1989/02メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 60回この商品を含むブログ (113件) を見る ディックの中期〜後期にあたる代表作といわ…

『外道忍法帖』山田風太郎,講談社,1965→1996(○)

外道忍法帖 (講談社ノベルスSPECIAL―山田風太郎傑作忍法帖)作者: 山田風太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1996/03メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る 山田風太郎の忍法帖シリーズの一冊。山田風太郎の作品のなかで,どのような位置にあるか…

『タイタンのゲーム・プレーヤー』フィリップ・K. ディック,大森望訳,東京創元社,1990-03(○)

タイタンのゲーム・プレーヤー (創元SF文庫)作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,大森望出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1990/03メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る 先日読んだ『奇術師』がやけに面白かったので,…

『奇術師』クリストファー・プリースト,早川書房,2004-02(○)

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)作者: クリストファー・プリースト,古沢嘉通出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2004/02/10メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 71回この商品を含むブログ (199件) を見る 語り口は読みやすいんだけど,どう…