hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『メディアミックス化する日本』大塚英志,イースト新書,2014ー角川春樹氏と角川歴彦氏のメディアに対する考え方の根本的な違いとは何か

本書を読むまで、角川春樹氏と角川歴彦氏のメディアに対する考え方の根本的な違いがあることを知りませんでした。中にいる人にとっては自明なことなのでしょう。本書では、角川書店がどうしてあのように変化したのかがよくわかります。 帯では「KADOKAWAとド…

『欲望の爪痕』スティーヴン・グリーンリーフ,黒原敏行訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ1662,1996,1998――元恋人の婚約者で失踪した娘を捜す

私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第11作目の作品。本作品の特徴は、元弁護士の普通の紳士的な私立探偵がコミュニケーションを武器に丹念に、依頼人の依頼に対して追っていくところでしょう。舞台は裏社会との関わりもなく、ある意味において、非常にリアリ…

『職業、ブックライター。 ー毎月1冊10万字書く私の方法』上阪徹、講談社、2013

本書は、著者にインタビューして、書籍の原稿を書き上げるブックライターの仕事についての本で、いかに質の良い原稿にするかが書かれています。 このような仕事がなぜ必要とされるか、出版に携わらない方にはピンとこないかもしれませんが、書籍や雑誌のため…

『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』ジョーゼフ・キャンベル, 倉田真木, 斎藤静代, 関根光宏訳,ハヤカワ・ノンフィクション文庫,1949,2015ーー脳内にさまざまな想像がかけめぐる

『スター・ウォーズ』に影響を与えたとして知られるようになった論文で,神話において英雄はどのように航跡を辿るのかについて語られています。確か「イニシエーション」(通過儀礼)という言葉は、本書から生まれた(or広まった)ような気がします。私も書…

『不良少女』樋口有介,創元推理文庫,2007――文体を変える

柚木草平シリーズの短編集。「秋の手紙」(1995),「薔薇虫」(1998),「不良少女」(2001),「スペインの海」(2001)の4編が収録。表題作の「不良少女」は解決しないで唐突に終わったので驚いた。とはいっても,短編集としては,どの作品も愉しめる。 …

『最悪のとき』ウィリアム・P・マッギヴァーン,井上勇訳,創元推理文庫,1955,1960

ウィリアム P.マッギヴァーンは第二次世界大戦後に活躍したミステリ作家で,主に悪徳警官ものが多いとされています。 日本の翻訳ミステリは,戦後から本格的になりますが,最初は戦前から引き続き,クリスティ,クイーンなどの謎解きものから紹介されていき…

『奇界遺産』佐藤健寿,エクスナレッジ,2010/『奇界遺産2』佐藤健寿,エクスナレッジ,2014

著者はTBSテレビの番組の「クレージージャーニー」でゲストの一人です。この番組は毎回見ていて,このゲストの本って読みたくなりますよね。丸山ゴンザレス氏でも,他の冒険者でも。何でですかね。番組を見ていると,一部しか見せてくれない,もっと見たいの…

『アオイホノオ 15』島本和彦,少年サンデーコミックススペシャル,2016

うーん,面白い。新谷かおる先生の編集者の詰め方は,比較的後期の作品の編集者から,週のほとんどを編集部で詰めていたと聞いたことがあります。この連載は『ファントム無頼』か『ふたり鷹』の初期だと思うんですが,その頃から,こんなに苦労していたんで…

『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男―西崎義展の狂気』牧村康正,山田哲久,講談社,2015

昨年,評判が高かった『ヤマト』のプロデューサーの西崎義展の生涯を述べられたノンフィクション。 いやー,久しぶりですね,いわゆる「怪物」の伝記ですね。「怪物」とは正確に何といったらよいかわからないのですが,大いなることを行うためには,犯罪を含…

「特集=出版社を作ろう!」『本の雑誌394号』2016/03/『一度は読んでほしい 小さな出版社のおもしろい本』 (男の隠れ家教養シリーズ),三栄書房,2014

『本の雑誌』の 「出版社を作ろう!」という特集には,とても心惹かれましたねえ。僕は昔,社員3名の小さな出版社に勤めていて,また,ぼんやりですが会社を辞めることを考えているので。しかし,出版社を作ることまでは考えていなかったですけど。 数年前に…

『少年の名はジルベール』竹宮惠子,小学館,2016

竹宮惠子氏の東京上京から『風と木の詩』の連載まで綴ったエッセイ集。 最初は書き下ろしかと思っていたけれど、奥付前のクレジットをみると語り下ろしらしいですね。オーケンの『サブカルで食う』も語り下ろしでしたが、このように自らの手札を披露するエッ…

『ひきがえるの夜』マイクル・コリンズ,木村二郎訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ1368,1970,1981――テーマは現代にも通じる

隻腕の私立探偵のダン・フォーチューン・シリーズの第3作目の作品。隻腕の設定は意味がないと思えるほど、本格的ハードボイルド小説です。 リカルド・ヴェガは大物俳優で演出家でプロモーターでもあった。ヴェガの舞台で女優のマーティーは役を得たがヴェガ…

『3万人が富を築いた お金をふやす教科書』『銀行員だけが知っているお金を増やすしくみ』

これらの2冊を読んで、お金を増やすには、自分の全部の時間を集中しなくてはならない、ということがわかりました。片手間ではダメですね。 インターネットの時代になってからは、あらゆる情報が分散してしまった感じがします。昔は、新聞とテレビ、あと自分…

 『YOU』キャロライン・ケプネス,白石朗訳,講談社文庫,2014,2016――ストーカーと普通の人の間

アメリカの新人の処女作。もっともケプネスは短編を多数発表していたり、雑誌やwebで記事を書いたり、放送作家や映画監督をしたりなど、多才な生きの良い人物のようです。年齢もわからないしね。本書は新聞の書評で、ストーカー小説だけど普通のものとは少し…

『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』三木一馬,KADOKAWA,2015――エンタメ編集者のビジネス書

この頃、編集者本の出版が増えているような気がします。あれとかこれとか……(すでに購入しています)。そんななかで本書は、電撃文庫でヒットを飛ばしているスター編集者の編集術をまとめたものです。 私の仕事内容とは異なりますが、少しでも参考になればな…

『さよならの手口』若竹七海,文春文庫,2014――事件の触媒としての探偵

昨年、各種ベストテンで好評を得た女性の私立探偵を主人公にした小説です。なかなか私立探偵小説は評価を得ることが難しいのですが。読んでみて、なるほど、と思いました。 読者と生活レベルが等身大的であり、欠点もあるけれど基本的に明るい、好感を抱く主…

『時計館の殺人〈新装改訂版〉(上)(下)』綾辻行人,講談社文庫,1991,2012

綾辻氏の「館シリーズ」の第5作目の作品。第1作目から工夫を凝らしていましたが、本書でもさらに新味と工夫を加えています。 鎌倉にある統計屋敷――日本有数の時計メイカーの前会長・古峨倫典が建築家・中村青司に設計を依頼した館で、通称「時計館」と呼ばれ…

『グロービスMBAクリティカル・シンキング  改訂3版』(グロービスMBAシリーズ)、グロービス経営大学院、ダイヤモンド社、2012――問題解決には構造を把握する

ブックオフの功績の一つとして、それまで古本で扱ってこなかった分野の書籍を古本として流通させたことといわれています。ビジネス書の分野がそれにあたります。いまはアマゾンが大きく占めていますが。私もビジネス書は興味なかったのですが、今頃になって…

『0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる』スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社、2014、2015

本書はタイトル買いです。筆者のひとりが『ヤバい経済学』の著者。ビジネス書という予想に反して、本書はエッセイ集といった趣でした。先入観をもたずに考えることが必要だということですが、そのノウハウが欲しかった。事例として小林尊氏が挙げられていま…

『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル,鬼澤忍訳,ハヤカワ・ノンフィクション文庫,2009,2011

NHKの番組で評判になったハーバード大学の講義の教授であるサンデル氏のベストセラーになった哲学書。番組を文字起こしした書籍だと思っていたので、リアルタイムでは手に取らなかったのですが、やたらブックオフに置かれたいるので(表紙が目立つ)、手に取…

『赤めだか』立川談春,扶桑社文庫,2008,2015

立川談春氏の自らの入門から真打ちまでの修業時代についてのエッセイ集。とにかく語り口がうまく、するする読むことができる。すぐれた作品がそうであるように、エッセイ、青春小説、業界小説、師匠と弟子の小説など、さまざまな視点で読むことができる。タ…

『ピアノの森(26)<完>』一色まこと、モーニング KC、2015/『げんしけん 二代目の十(19)』木尾士目、アフタヌーンKC、2015

■ 『ピアノの森(26)<完>』一色まこと、モーニング KC、2015 ようやく最終巻。雑誌連載でも読んでいましたが、アレはやっぱりミスリーディングじゃあないでしょうか。 ピアノの森(26)<完> (モーニング KC) 作者: 一色まこと 出版社/メーカー: 講談社 発売日: …

『裏切りの明日―結城昌治コレクション』結城昌治、光文社文庫、1975、2008――時代を超えられず

さまざまなミステリを書いた結城昌治氏の初期~中期の作品。解説によると1965年発行で50年経っています。 主人公は独身の31歳の沢井という刑事です。沢井は普段は真面目な刑事で、かつ、仕事のこと、女のこと、金のことなど、さまざまな闇を抱えています。あ…

『 パーフェクトフレンド』野崎まど、メディアワークス文庫、2011

野崎まど氏の(おそらく)5作目の作品。野崎氏の架空の設定の中でアクロバットな論理展開の後にリドルミステリに落ちつくという特徴があります。さらに、とぼけた感のある非常に特徴的なキャラクターとギャグが備えてあり、決して重くはならない作風です。ち…

『100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか』ジュリアン・バジーニ,向井和美訳、紀伊國屋書店、2005、2012

書籍の企画のネタになるかもしれないと思って手に取った本。「誰も損をしなければ何をしてもよいか?」「不平等が許される場合とは?」など哲学・倫理学の100のテーマについて、具体的な小話と解説が記されています。さらっと読んだだけですので、役に立つか…

『ハードボイルド徹底考証読本』小鷹信光、逢坂剛、七つ森書館、2013

先頃亡くなられた小鷹氏と作家の逢坂氏のハードボイルド小説と映画についての対談本です。映画のところはすっ飛ばして、小説のところだけ読みました。このお二人ですからハメットの話ばかりでした。 翻訳作法のところが面白かったですね。エルモア・レナード…

『声』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子訳,東京創元社,2002,2015――ある男とその家族の悲劇  

インドリダソンの翻訳3作目の作品。これまでの中でもっとも素晴らしい作品でした。これが、2002年の作品か、なぜもっと早く翻訳されなかったのだという思いでいっぱいです。雰囲気は、メグレ警部シリーズに近く、それをもっとわかりやすく説明を加えたものと…

『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?』布川郁司,日経BP社、2013

最近、アニメがどのように作られているか、ビジネスとして展開されているか、強く興味をもつようになりました。どうしてこのようなアニメの企画が通ったのか、何を収益の柱にしているのか、不思議なものが多くあるんですね。 本書はそのようなコンテンツビジ…

『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン, 野口百合子訳, 創元推理文庫, 2012, 2014――ナチもののコミック・ミステリ

一昨年、翻訳ミステリでなかなかの評価を受けた、87歳の元敏腕刑事の老人が主人公のハードボイルド・ミステリ。というよりも、ナチもののコミック・ミステリでした。 元殺人課刑事のバック・シャッツは親友から臨終のときに、二人だけで昔の千艘の話としたい…

『ミステリマガジン700 【海外篇】』杉江松恋編、ハヤカワ・ミステリ文庫、2014 ――短編集をもっと発行してほしい

海外ミステリの短編集。まさに企画の勝利というか、今まで早川書房はこれだけの資産をどうして遊ばせていたのか、と思います。 収録された作家は、フレドリック・ブラウン、パトリシア・ハイスミス、クリスチアナ・ブランド、ルース・レンデル、ジャック・フ…