ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』(○)

搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

この「搾取される若者たち」というシステムについて,本書ではバイク便ライダーという職業を例に挙げて,解説している本です。

このシステムは,いろいろなところでありますよね。大学の研究者も編集者も同じです。著者も同様の事例が次々と報告されることを期待しているのではないでしょうか。

少し本書の内容とは異なるのですが,ある歯科医師が,自分の技術的なピークは30代までだった,40代を過ぎたらやはり落ちていくだけなんだよね,と語っていましたね。

30代までが仕事的によくできるし評価される職業は,若いうちまでは非常によく働きます。働いてしまいます。しかし,その後能力的に落ちていくわけです。

スーパーな能力をもっている人には,あまり関係ないことですが,普通の能力しかもたない人にとっては,まだ40代にもかかわらず落ちていく自分の能力,台頭する若手,この事態に対し,どのように対処し,我慢(そう,我慢ですよね)するかが問われるわけです。

そのためには,若者から搾取しなくてはならない。なぜなら,自分の能力が落ちていくから。そのようにできる立場にあるわけですし(しかし,そのシステムすら乗ることができない人もいる)。

もう少し臨場感のある記述が欲しいところですが,研究の倫理上の制約から,記述が抑えられてしまっているのはちょっと残念でしたね。