- 作者: 永沢光雄
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/06
- メディア: 文庫
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永沢光雄氏が亡くなられました。ご冥福をお祈りします。
本書は傑作でした。
大学生のとき,ある雑誌でアルバイトしていたのですが,その編集長が『ビデオ・ザ・ワールド』を机の上に重ねていたんですね。あまりにも暇だったとき,その雑誌を借りて読んだところ,本書のもととなったAV女優のインタビュー連載が掲載されておりました。変形A4判ぐらいの1色スミの誌面に,とても小さい文字が6段ぐらいに並べられておりました。
一度読むと何となく心に残るインタビューで,時間があったこともありましたが,何度も読み返したものです。そうすると,その編集長は「そのインタビュー,面白いよな。前に,その企画をパクって提案したけど却下くらったけど」と声をかけてもらいました。
その後,バックナンバーも数冊借りて,永沢っていう人はいいライターだなあ,と名前を憶えました。同時期かその後,『VIEWS』(雑誌名はうろ覚え)の連載も追っかけたものです。そうしたある日,池袋の旭屋書店で,本書を見かけたとき驚喜して,購入しました。
今は本書が手元にないので,正確なことは書けませんが,確か解説に大月隆覚氏―編集もしていたようにも思います―が,AV女優のインタビューもたくさん集めてしまえば民俗学の資料になる,というようなことを書いていたように思います。本当にそのとおりのノンフィクションとなっています。インタビュー,ノンフィクションの方法論を駆使しており,永沢氏のライターとしての能力も高いものを感じました。
私ノンフィクションなど,さまざまな書き方を選択しているのを見て,永沢氏は沢木耕太郎が好きなのだろうと推理しましたね。内容も,事実とは何か,リアルとは何かを常に考えられています。
永沢氏は,それぞれのAV女優が本当のことを言っているのか,嘘を言っているのかには興味をもたず,インタビューを受けているAV女優がそのシチュエーションでそのようなことを言っているのだ,言わざるを得なかったのだという事実を描写しています。そのため,民族資料であり,永沢氏の私ノンフィクション作品でもなっているのです。