ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『敗因と』金子達仁,戸塚啓,木崎伸也,光文社,2006(○)

敗因と

敗因と

わたしの読後の感想は,「ドイツワールドカップの統括は,本当にこれでいいの?」でした。とくに著者らに問いかけたい。いろいろな事情で書けなかったと思われますが,もっと責任を問うべき人物に対しての問いが全くないことが残念としか言いようがありません。

少なくとも日本サッカー協会に対しては,取材をして欲しかった。レポートを引用するのではなく,レポートの貧弱さを指摘して欲しかった。日本のことをよく知っている,外国人監督と選手に,何故日本は負けてしまったのかを訊いて欲しかった。

著者の一人である金子氏は,最初の著書である『28年目のハーフタイム』で人気サッカーライターに躍り出ました。わたしも「Number」に掲載された川口能活氏へのインタビューから次々と驚きをもって読んだものです。しかし,金子氏にとって失うものも多かったのでしょう。それ以降見せかけだけの辛口になったのでした。それが,その後の読者の減少につながったのでしょう。今回,わたしは,彼の自己批判を期待したかった。でも,それはなく,いつもの自己肯定になっていたのでした。まあ,本書は金子氏の単著ではないですからね。

中田氏についてですが,このレポートに書かれてあるとおりなんでしょう。わたしも,協調性が全く持ち合わせていないので,痛いほど気持ちが分かります。しかし,サッカーというチームプレイを必要とする競技を選択した以上,負けても自分のプレイができたから満足と思って欲しくなかったです。トルシエのときのように自分のプレイができなくても,勝てば良しと思って欲しかった。ジーコのチームで良かったとは思って欲しくなかった。

まあ,それでも本書は,ドイツワールドカップの数少ない資料となりえますので,必読と言えます。それに対し,読者一人ひとりが様々な感想をもつことでしょう。