ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『フランチャイズ事件』ジョセフィン・テイ,大山功訳,早川書房,1954-09(○)

フランチャイズ事件 (Hayakawa pocket mystery books (138))

フランチャイズ事件 (Hayakawa pocket mystery books (138))

謎解きミステリとして期待して読みました。巻末に江戸川乱歩の解説があり,「事件が極めて異様で,それだけでも充分面白い上に解決の意外と主人公の奇異なる性格に魅力がある。…(略)」と激しく同意です。
ある十五歳の娘が誘拐され,ある屋敷に連れ込まれ,1か月もの間監禁され,暴行されつつ下女働きさせられた。娘は監禁者のすきをみて,やっとの思いで脱出した。娘は屋敷の窓の形の記憶などから「フランチャイズ邸」がその場所だと訴えた。しかし,フランチャイズ邸の主人は身に覚えがない。その主人は潔白を証明するため,弁護士に依頼した。
設定は,非常に奇妙で面白いのですが,その後の展開は,あまり意外性はありません。文章はのらりくらりと説明が長いのですが,テンポよく読めばすんなり頭に入ってきます。まあ,後半は謎がひとつひとつ解けていくところはスリリングですが,私が期待していた激しいどんでん返しがなかったので,少し残念でしたね。読んで損はないというところです。