ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『仕事をしなければ、自分はみつからない。―フリーター世代の生きる道』三浦展,晶文社,2005(○)

著者の三浦展氏はベストセラー『下流社会』の著者です。『下流社会』では,著者のあまりにも,データしか見ない一面的な解説に腹が立ったものでした。しかし,マーケティングからの考え方は,新聞や週刊誌の親父的発送とは異なり,とても新鮮で説得力があり考えさせられました。

本書は,『下流社会』以前に,フリーター世代について書かれたものです。フリーターにとっては,「自分を探すな,仕事を探せ」など厳しい論調になっています。著者は,厳しい論調とは思っていないようですが…。

以下は,あとがきの一部からの引用です。若者分析にかけては,データ主義で論理的な著者が,このような乱暴な書き方をすることに本音が現れているような気がします。

二〇〇一年以降,社会情勢はいっそう悪化した。犯罪が増え,自殺が増えた。青少年による不可解な事件犯罪も後を絶たず,ひきこもり,ネット心中も問題になった。そして四〇〇万人を超えるフリーター,無業者。事態はかなり深刻だ。

あえて分かっていて,「社会(政治)の責任」ではなく「若者自身の責任」と書いているのでしょうか? それとも,本気で若者が悪いと思っているのでしょうか? どちらの側面もあるかと思いますが,社会が救えることがあるのだという優しい視点も欲しかったなと思います。このような若者は,社会がつくり出したものであるという一面もあるのですから。まあ,一部学生時代に職業教育をするべきなど,そのようなことも書かれていますが,よっぽどフリーターの無知ぶりに腹が立ったのかなあ。

あと,フリーター世代が生まれた原因として団塊世代について解説しているところが面白いです。ダブルスタンダードをもっているなどですね。