- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/31
- メディア: 単行本
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社会的不利になるにもかかわらず,学ばないことを選択するこどもたち,働かないことを選択する若者たちが何故出現したのかを解き明かしたもの。簡単にいってしまえば,これらの人々が「等価交換」の原理に基づいて行動しているからという。なるほど,と思いました。詳しくは本書参照してください。論理的にしっかりと書かれています。
『鋼の錬金術師』で,世界の原理原則は「等価交換」であると論じていることに,妙にしっくりするなあと感じていたのですが,その原理原則そのものが,われらの世界の原理原則とぴったりだったからですね。だから,アメリカなどでもしっかり受け入れられていんでしょう。
この下流スパイラルから抜け出すには,この等価交換の原理を捨て去るしかありません。もしくは,それを持ち得た上で,あえてその不利を引き受けることが大事になります。まあ,それが教育なんでしょう。ますます現代人はこころが引き裂かれるわけになりますが。
また,先日取り上げました,広井良典『持続可能な福祉社会』では,「後期子ども」への財政支援として,「若者基礎年金」を究極の私案として以下のように提案しています。
その内容は,「20〜30歳のすべての個人に月額4万円程度の『若者年金』を支給する」とするものでした。ちなみに,財政規模は約8.1兆円(現在の現金支給額は44.8兆円(2003年度)であり,高齢者への年金に比べれば非常に少なくすむらしい。ちなみに財源は,①退職年金のスリム化,②相続税の強化(再配分を通じた「機会の平等」の実現),③消費税その他一般財源としています。(p98より)
そのことについて,内田樹『下流志向』では,以下のように言及しています。
ニート問題について専門家たちは,いろいろな対応策を政策的に提言しています。例えば,「逆年金」システムを採用して,若い無業者に年金を払って,生活を支援したらどうかとか,…(中略),さまざまな提言がありますけれど,申し訳ないけれど,僕はどれも効果がないだろうと思います。(p142〜143)
うーん,難しい問題です。おそらくは,どちらも正しいのだろうと思います。でも,このように考えるとそんなにしてまで働かなくてはならないのか,という疑問も生じます。