ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦,角川書店,2006-11-29(○)

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

先日の『下流志向』と同じ日に池袋ジュンク堂で購入したもの。発売当初から,タイトルと装画が好みだったので気になっていたのですが,あまり新刊を読まないしハードカバー嫌いなので,それを乗り越えていけるほどの思い切りがなかったわけなんです。

それが何故購入したかといいますと発売して数ヶ月にもなるのにかかわらずジュンク堂の新刊コーナーに置かれていて,この本のところだけ山が小さくなっており売れていたからで,まあ買ってみるかと心に勢いがついたからでございます。決して,これを買えば一万円以上に買い物になり,四階の喫茶店のコーヒー無料券がもらえるからではありません。

内容はと言いますと,考えてみると説明するのは難しい。簡単にいってしまえば,大学一回生(「一回生」という言い方は関西だけなのかなあ? 関東ではたぶんありませんよね)の女の子が飲み会や古本祭や学園祭でどういうわけか巻き込まれる,彼女に惚れてしまった冴えないクラブの先輩が出会いのきっかけをつかもうとするんだけどなかなかできないドタバタストーリーといえばいいのでしょうか。

読んでいると大学時代の自分にオーバーラップしてしまいますので,懐かしいのでしょう。おそらくは誰もがそのようなノスタルジックな気分になるのではないかと思います。内容はまったく異なるのですが,主人公の女の子パートの文体は,なんとなく初期の川原泉の作品に似ていますね。それで,こっそり偶然を待ちながら追いかけ回す先輩は,『げんしけん』の斑目でしょうか。できれば,その先輩のキャラをもうちょっと立てても良かったんじゃないかな,結構普通だし。