ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

「それでもボクはやってない」と福島事件

*ネタバレしていますのでご了承お願いします。

 本日,遅らせながら新宿の映画館で「それでもボクはやってない」を見てきました。していない痴漢に対して,逮捕されてしまった青年が裁判で戦い続ける物語です。周防監督らしく丹念に丁寧に物語が説明されており,非常に面白かったですね。ラストシーンですが,「ひょっとしたら…」と思った通りの落ちになっており,これが現実なんだろうなと思いました。そのための伏線もしっかり張られていましたし。2時間30分の長さをまったく感じさせず,小説でいえば短編小説のようでした。

 帰宅したのち,本日は,平成16年12月に福島県立大野病院において帝王切開術を受けた女性が死亡したことについて,手術を担当した医師が業務上過失致死および医師法違反の容疑で逮捕起訴された日であり,医療系の多くのブログにて,「我々は福島事件で逮捕された産婦人科医の無実を信じ支援します」とエントリーされておりました。私も医療系のブログを見て,この事件については,無実だと思いますが,この映画を見るとそう簡単に無実を勝ち取ることはできないと,少し寒気を憶えました。

 医療系の方々は,この映画を見てみてください。本当の敵は誰なのか,しっかり説明されています。無実を勝ち取るには,科学的な客観的な事実の証明ではないのです。逮捕した警察が,起訴した検察が,面子を失わないように逃げ道を与える,つまり間違えてしまったのもしょうがないと周囲やマスコミが思わせるように仕向けなければならないでしょう。それほど,面子は重たいモノなのようです。