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「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか』渡邉正裕,東洋経済新報社,2007-02-23(○)

若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか

若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか

 徹底的に現役社員にインタビュー調査を行って,その企業がいったいどのような性格をもつ会社なのか,分析した本。就職学生向けに書かれたようではありますが,一種の企業文化民俗学のようなもので,このことは私も興味を持っていたことであり,非常に参考になりました。

 著者は,元日経新聞社の記者で,現在独立系ニュースサイトの設立と編集長をしています。私は,そのニュースサイトを知らなかったのですが,三省堂書店本店で平積みしていたので,たまたま手に取ったら,興味深い分析の仕方をしてましたので,その場で購入。

 そのニュースサイトというのは,本書でも言及されていますが,「27才1,200万円! 国民の働く意欲削ぐ講談社の異常賃金」(http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=444&e=2)を報道したサイトで,でそれは私も知っていました。

 それで本書はといいますと,「転職力が身に付くか」「やりたい仕事ができるか」「社員定着率は高いか」「働く時間に納得できるか」「社内の人間関係は心地よいか」「女性は活用されているか」「報酬水準は高いか」「福利厚生は手厚いか」「評価に納得性はあるか」「雇用は安定しているか」という切り口で企業を評価しています。

 例えば「転職率が身に付くか」というチャプターでは,どのような企業が転職力を身に付けられるかを述べた後,業界・企業別の教育・研修の見分け方を『「会社に期待するな」エリア』『「大学の延長」エリア』『「職人と勘違い」エリア』『「理論と実践」エリア』に分類しています。

 この中で出版社は『「職人と勘違い」エリア』と分類されており,そのエリアを「そもそも研修で学ばせる,という概念すら存在しなかった」としておりますが,まあ私の経験上でも,他社の話を聞いても,その通りとしか言いようがありませんね。教えればすむことなんですが,マニュアル化をせず,いきなり実践に落とし込みます。

 新卒の新人の愚痴で,「まったく教えてくれない」と言っていたことを思い出しました。だいたい,仕事しながら覚えられる程度の内容なんだから,マニュアル化すれば非常に効率的になるんですけどねえ。忙しくて教える暇がないというのを言い訳にしていますね。

 でも,教えると言っても,マスコミの専門学校もあるのですが,それを卒業したからって,仕事ができるようになる訳じゃないから,教えるのは無駄と考えてしまうのも仕方がないという一面もあるかも。

 本書のことで惜しむらくは,例として一流企業だけが挙げられているところですかね。縁がない人には意味がないじゃんと思ってしまいました。