hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。海外ミステリが中心のブログです。下書きがなくなってしまったのが悲しい……。

異人としての探偵

 昨日のエントリの続き。『異界を覗く』所有の「「異界論」・「異人論」は学問の交差点」のなかで,小松先生(と思わず「先生」という敬称を付けてしまいました)は,異人および異人研究を以下の4つのグループに分けています(おそらく上記の分類は,小松先生の他書によって書かれているかと思われますので,今後少しずつ読んでいくつもりです)。

  1. ある社会集団(共同体)を訪れ,一時的に滞在するが,所用を済ませればすぐに立ち去っていく「異人」―例えば,遍歴する宗教者や職人,上人,乞食,観光目的の旅行者,聖地への巡礼者など
  2. ある社会集団(共同体)の外部からやってきて,その社会集団に定着することになった「異人」―例えば,戦争や飢饉などによって自分の故郷を追われた難民,商売や布教のために定着した商人や宗教者,共同体を追われた犯罪者など
  3. ある社会集団(共同体)が,その内部からその成員をさまざまな理由から差別・排除する形で生まれてくる「異人」―例えば,前科者や障害者,金持ちや貧乏人など
  4. 空間的にはるか彼方の「異界」に存在しているとされているために間接的にしか知らない,したがって想像のなかで一方的に関係を結んでいるにすぎない「異人」―例えば,海の向こうの外国人,異界に住む異神など

 この分類で共通していると思われるのが,「探偵」ですよね。もっといえば「ヒーロー」としても良いかも知れません。このような民俗学的分類で,最初に思い出されるのが,京極夏彦氏の京極堂シリーズですね。ある犯罪を,現代の陰陽師である京極堂(なんで作者はほぼ同じ名前を使用したのだろうか?)が,お祓いして解決を図るわけですが,その犯罪物語において,京極堂こそ「異人」ではないでしょうか。

 この考えは,ロス・マクの私立探偵リュー・アーチャー自身も口にしています。資料が手元になく,正確な引用ではないのですが,「私は,ひとつの世界に入って関わりをもって出て行くのが好きなのです」というようなことを喋っています(『一瞬の敵』だったような気がする)。これも,「異人」としての探偵としてもよいでしょう。

 先日,村上春樹氏によって再訳されました『ロンググッドバイ』ですが,○○新聞(新聞名を忘れてしまいました)において,丸谷才一氏が,改めて今回の翻訳を読むと,本書の舞台は社交界であり,社交界トラブルに巻き込まれたフィリップ・マーロウ(探偵)のように感じると述べておりました(うろ覚えです)。これも,「異人」としての探偵と呼んでもよいかと思われます。

 謎解きミステリでは,「異人」としての探偵を強調するために,探偵そのものに強烈なキャラ付けをしていますね。それは,凡人では読者に逆にリアリティを感じないからでしょう。いや,単にそのほうが面白いからなのか。うーん,分かりません。