ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論』仲正昌樹,晶文社,2005-06(○)

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論

なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論

 タイトルに惹かれて手にとったエッセイ。惹かれた理由は,私自身が誰に対しても自分の言葉が届いていないのじゃないか,どうしたら届くのだろうという悩みと葛藤があったからですね。または,どうしてあの人の言葉は届くのだろうという疑問もありました。で,そういう悩みと疑問には答えてくれないエッセイでしたが,対話がなぜうまくいかないのかを率直に語っているので,読み物として,興味深く読むことができました。

 ちなみに,仲正氏がどういう方なのか,本書を読むまでまったく知りませんでした。非常に論理的で,哲学者なんだなあと感心しましたね。知らない専門用語が結構出てきます。

 内容はというと,議論や対話のときに,論点や争点が合わないことがある。それは何故か。人の話を聞かないからである。それは,お互いに用いている用語の定義が違っていたり,どちらかが誤用したりしているのに,そのすり合わせをしながら,一定の結論に至るのがコミュニケーションなのに,最後まで話を聞かず一方的に話を押し通したりする「困ったちゃん」がそうである。筆者は「パブロフの犬のように反応するお子様」と呼んでいる。これにより,コミュニケーションの祖語が生じる。

 また,物事に対して,人それぞれが「物語」を抱いていて,そのすり合わせをせずに,上記同様に一方的に物語を押しつける。そういう人々は知識人などでも増えており,自分の物語が他人の物語と異なっていたり,自分の物語が誤っているとはつゆとも思わない。それにより,コミュニケーションができなくなるというわけである。

 たぶん,そんなようなことが書いてあったんだろうと思う。間違って読み取っていたら,これも話が通じなかったことになるんでしょうね。