- 作者: ロイ・ヴィカーズ,吉田誠一,村上啓夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/05
- メディア: 文庫
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迷宮入りとなった難事件の捜査を引き受ける迷宮課があるという設定。本書は,その迷宮課が活躍する事件を集めた10短編集。という架空の設定の割には,各短編とも実にリアリズムに徹しています。
ロイ・ヴィカーズをまとめて読んだのは初めて。昔『ミステリマガジン』に掲載された「百万に一つの偶然」を読んだくらい。その紹介文には,確か松本清張が好きな作家として挙げたと書かれており,興味をもって読んだのだが,正直その時には松本清張が好きだという意味がよく分かりませんでした。
今回,まとめて読んで,その意味が分かりました。ルポルタージュのようなリアリスティックかつ淡々とした筆致(例えを挙げるなら宮部みゆきの『理由』のよう),一見事件と無関係な些細な事実から,事件が解決されていく倒叙ものの物語などが非常に似ています。かなり影響を受けたのではないかと感じさせます。
あと,犯人像がちょっとDQNな感じな人物が多いのも興味深い。仕事もつかず母親の遺産でぶらぶら暮らしている20代の独身男(がそれを教えず年増女と結婚する)などね。