ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『地下室の手記』ドストエフスキー,安岡治子訳,光文社,2007-05(○)

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

 新訳で新たに出版された『カラマーゾフの兄弟』が非常によく売れているようですが,『カラマーゾフの兄弟』は昔大学生の頃読んだことがあるので,そのときから気になっていた,かつ短いので『地下室の手記』を出張先の書店で手にとった次第。

 でも,『カラマーゾフの兄弟』のときも思ったことだけど,どうも,ロシアの小説は私にリアリティを抱かせない。もっと簡単に言ってしまえば,ノリにのることができない,という感じ。ただ名作と言われれているから読んでいんですね。

 と思いつつも,本書は,現実社会に適応できない人間の,単なる痛い人間の,現実に対する恨み言を書きつらねており,まるで2ちゃんねるを見ているようでした。しかし,長い人生のなかで誰でも,このような自意識過剰な時期はあるものなのでしょう。ただ,そういう人にとって救いになるかどうかは分かりませんが。