ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『闇先案内人(上・下〉,大沢在昌,文藝春秋,2005-05(○)

闇先案内人〈上〉 (文春文庫)

闇先案内人〈上〉 (文春文庫)

 トラブルの渦中にある客を追っ手の届かないところへ逃がす「逃がし屋」の仕事をしている葛原は,警視庁幹部から極秘入国した最重要人物を捜せという依頼を半ば脅迫という形で受ける。その最重要人物を逃がしている者の逃がし屋だった…。葛原のチームは,彼らのネットワークから探っていったのだが…。

 「逃がし屋」という設定そのものが,『エリア88』のグレッグを思い出させて,ちょっと嬉しい。というのは,そのエピソードがメチャメチャ好きだったから。確かグレッグは,冷戦時代に東側から西側に亡命する人物を運ぶ仕事をしていたのですが,トラブルに巻き込まれて逃げるために外人部隊に入隊するという設定でした。

 本書のストーリーそのものは,追っていけばいくほど,闇の中を手探りしつつ,一転二転していき,頭が混乱してしまいます。作者はリアリティを出すために,必要以上の説明をしません。非常にスリリングな物語を堪能できます。