ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『柔らかな頬〈上・下)』桐野夏生,文藝春秋,1999→2004-12(○)

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

 桐野夏生氏の直木賞受賞作。ミステリというよりも,普通小説に近い。

 夫の友人である石山と不倫をしているカスミは,その石山の招きで北海道の別荘に夫婦娘一家で招かれる。その別荘は湖畔にあり,管理人以外ほとんど人がいない。そこで,5歳の娘が謎の失踪をした。罪悪感にかられたカスミは,それから娘を捜すことに執心する。また,事件の関係者の運命も少しずつズレ始める…。

 ストーリーそのものは非常に暗く地味なのですが,じわじわ動くストーリーテリングが上手く,読者の目を離すのを許しません。ラストシーンは,そうかもしれないなあ,と少し考えていたとおりでしたが,もう一度読むと,犯人がわかるようになっているんですかね? それとも犯人は謎のままなんでしょうか? (そのためにもう一度読み返す気力はありません,すみません)

 それにしても,桐野氏の作品はいつの間にか売れるようになっているんですねえ。空港の小さな本屋さんの文庫売り場に『グロテスク』とともに上下巻とも面出しで置かれていました。新刊以外でそういう作品はありませんでした。