- 作者: リチャードニーリィ,Richard Neely,佐和誠
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/09
- メディア: 文庫
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ニーリィは1970年代のアメリカのサスペンスを得意にしたミステリ作家。本書は,昭和53年に初めて翻訳され,マニア筋には評判になったものの,おそらくあまり売れなかったのでしょう。私が読んだ文庫には,昭和57年4版発行と書かれています。5年で4版は,良いのだろうか,悪いのだろうか,よく分かりません。奥付によると,その後,平成10年に改版(おそらく再販)して発行されたようです。
改版された本書では,ミステリ作家の折原一氏が解説を書いています。おそらく,何かミステリ関係のベストのアンケートがあるたびに,ニーリィを挙げていたのでしょう。折原氏は,ニーリィを「唸るサスペンス,ねじれたプロット,いやらしく意外な結末」と絶賛しています(これは折原氏の作風そのものですよね)。
ベトナム戦争帰りのヒッピーであるジョニー・セクストンは,自らが製作する映画に3万ドルの資金を投資してもらうため,成功した建築事業者である父トーマスにお願いしに故郷へ戻った。父トーマスは,妻を亡くしたすぐ後に,20歳若い後妻ルシルと結婚している。ジョニーは金を手に入れるべく,ルシルに声を掛けて味方につけ,アリバイ工作をして,父を事故に見せかけて殺そうとするのだが,死体が消えて,父は失踪してしまった…。
ジョニーも,トーマスも,ルシルも性格がいやらしく悪く,自らの欲望に忠実で,誰一人感情移入できないキャラばかり。ストーリーは,二転三転して,最後は意外な結末に至ります。しかし,書きぶりが一読では分かりづらくなっており,元に戻って読むことがしばしば。だから,日本で受け入れられなかったのではないかと思われます。
けれど,まったく共感できないキャラでラストまで読ませてしまうのは,素晴らしいといえます。逆にこういうキャラ,私好きですし。