ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『お人好しでもいい』パーネル・ホール,田中一江訳,ハヤカワ文庫,1988→1992(○)

お人好しでもいい (ハヤカワ・ミステリ文庫)

お人好しでもいい (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 事故専門の調査員スタンリー・ヘイスティングズが主人公の軽ハードボイルドのシリーズ第3作目。雰囲気が近いシリーズとして,ウォーレン・マーフィの探偵トレース・シリーズ。テレビの私立探偵ドラマを小説にしたようなものですかね。

 昔よく「口先三寸で生き延びる探偵」というコピーがありましたけど,本書はまさしくそんな感じで,よくいえばクラッシック。けど,今はそういうの,あまりありませんね。何ででしょう? そういう存在の探偵にリアリティがないからかな? 私は好きなんですけどね。意地をはって,「誰にも頼らないということは自分の吸う空気よりも大切だ」といいつつ,何とかかんとか切り抜けるって。でも,年末のミステリ・ベスト10等では評価されませんね。日本では,萩原浩の『ハードボイルド・エッグ』が傑作だったんですけど。

 殺人課の部長刑事マコーリフは,アトランティックシティに住んでいる娘とその婿の夫婦仲がぎくしゃくしている,どうやら婿の様子がおかしいと危ぶんだ。そこで,マコーリフは,スタンリーにその夫婦を調査するよう依頼した。調査をしてみると,娘も婿も浮気をしていた。その尾行の途中で殺人事件2件に遭遇し,逮捕されてしまう。

 少しボリュームが多いけど,ストーリーそのものは軽いし,その割には複雑で,最後は少し皮肉が効いています。口先三寸で事件を解決するわけだけど,ちょっと強引だったかな。