ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『外道忍法帖』山田風太郎,講談社,1965→1996(○)

 山田風太郎忍法帖シリーズの一冊。山田風太郎の作品のなかで,どのような位置にあるかは解説などからは不明。平岡正明の解説によると「風太忍法帖が当時のベストセラー・ナンバー1であり,デモ隊員も尻ポケットにつっこんでいたということを立証する一冊だ」とのこと。

 私が今回読んだのは,1996年より刊行された「講談社ノベルズ・スペシャル 山田風太郎傑作忍法帖 第2期」の第3回に刊行されたもの。私はずいぶん昔に古本屋で購入しました。調べてみると,その後2005年にも河出文庫から刊行されています。

 島原の乱から十二年後,小石川の牢屋敷に月に数人の伴天連や切支丹が送られる。それらは長崎でとらえられた二十歳前後の女たちであった。それは背教者フェレイラ=沢野忠庵が三百十三年の生命を持つ十五童女を探すためだった。あるとき連れてこられてきた娘の前で青銅の十字架をきると,その娘の下腹部から鈴の音がなった。その娘こそ「十五童女」の一人であったのだ。その鈴にはジュリアン中浦が残したローマ法王から預かったキリスト教布教のための莫大な資金が隠された場所を示す暗号が書かれていた。早速,その十五名の娘を捜すのだが,その情報を入手した幕府配下の伊賀忍者十五名と由比正雪甲賀忍者十五名も参戦することになった。

 登場人物が多すぎて,十五名対十五名=三十名の戦いが繰り広げられる割には,一つ一つの戦いがあっさりしています。まあ,例のごとく変態忍者同士の戦いで,面白いのですが。

 ジャンルを「SF」とするか「時代小説」とするか,少し悩みました。面白さということですと,SFテイスト部分なんだろうと判断しましたが…。しかしどうも,時代小説における基本的知識の欠如が,本作品を十全に味わえなかったような歯がゆさを感じました。