ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『愚者のエンドロール』米澤穂信,角川文庫,角川書店,2002(○)

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

 解説がないので確かではないが,本書は角川スニーカー文庫の「スニーカー・ミステリ倶楽部」の一冊として刊行されたもの。ミステリ色を強くしたライトノベルのシリーズなのだろう。本書に関しては,ライトノベルというレッテルを付けることは意味がないと思われるが,そういう新しい流れとルートの中で発表された佳品である。

 高校の文化祭でミステリー映画を製作したが,殺人が起きたところで,その脚本家が倒れてしまった。その先のストーリーと謎解きは誰も知らされていない。文化部4名はそのメンバーの一人に文化祭に間に合うよう早急にその結末を推理してほしいと頼まれた。果たして,その尻切れトンボの映画を見ると,劇場の袖という完全な密室でナイフで刺された殺人であった。4名は銘々推理していくのだが…。

 正直言って,ライトノベルに特有の描写の仕方,ストーリーの流れが随所に見られ,そこに違和感を感じるのだけど。それでも,この謎解きへのこだわりは素晴らしいし好ましい。それはライトノベルという枠があてこそ成功していると思う。だから,しょうがないだろう。謎解き小説に飢えている人にお勧めできる小説である。