ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『空白の殺意』中町 信,東京創元社,2006(○)

空白の殺意 (創元推理文庫)

空白の殺意 (創元推理文庫)

 作者は,いわゆる新本格派が出現する前に,謎解きミステリを書いて,マニアから歓迎されていたミステリ作家。評論などでもマニアに受けるという評価であったこと,タイトルが『○○殺人事件』というものであったことから,私は手にとることがありませんでした。本書は,1980年に『高校野球殺人事件』(トクマノベルズ)というタイトルで発表されたものを改題・改稿した決定版。『高校野球殺人事件』では,手にとらないですよねえ。

 高校教諭である角田絵里子が,学校の教え子の追貝弓江が絞殺された新聞記事をみてショックを起こしたという遺書を残して,農薬を飲んで自殺した。その遺書は日記帳をやぶりとったものであったが,日記帳そのものはどこにもなかった。追貝弓江は高校野球のライバル高校の野球部員に暴行されたと告発されていた。それにより甲子園出場校が変わる。さらに追貝が誰に殺されたのか?

 最初読んでみて,「あれ,なんかおかしいな」と思ったところがあったので,「ひょっとしたら,○○が犯人では…」と疑ったものの,話の展開を追っていくうちに忘れてしまい,最後やはりそうだったのか,という感じでした。折原一氏の解説通り,なかなかの騙しのトリックでございました。