ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『赤い霧』ポール・アルテ,平岡敦訳,早川書房,1988→2004(○)

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 フランスの謎解きミステリ作家ポール・アルテの第3作目。フランスの冒険小説大賞(って一体何なんだろう?)受賞作。ポール・アルテの代表作となるのでしょうか。巻末にポール・アルテの本書の紹介エッセイ,芦辺拓氏の解説めいたエッセイが付けられています。

 1997年のイギリスのブラックフィールドという田舎村で,昔起こった密室殺人事件を解決するために,そこに住んでいた新聞記者シドニー・マイルズが休暇をとって再調査にやってきた。事件の関係者を集めてみるのだが,翌日その一人が殺された。さらにもう一人殺され連続殺人事件が起こる。昔の密室殺人の犯人が起こしたのか? マイルズは事件を解決する。しかし,その後ロンドンで切り裂きジャックによる娼婦連続殺人事件が起こる。切り裂きジャックは誰なのか? マイルズは調査に当たるのだが…。

 第1作・第2作の悪い意味でのバカバカしさは影を潜め,プロの作品らしくなっており,若干それがさみしくも感じます。最初の変なところも,伏線として,その後の展開でしっかり回収されております。賞を取ったことように,非常に意欲的な構成を用いられています。例えるのでしたら,アイラ・レヴィンの『死の接吻』に近しいでしょう(それほどの傑作ではないのですが)。そういう意味において,素晴らしい作品です。