ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『枯葉色グッドバイ』樋口有介,文藝春秋,2003→2006(○)

枯葉色グッドバイ (文春文庫)

枯葉色グッドバイ (文春文庫)

 樋口有介のホームレスになった元刑事を主人公にした軽ハードボイルドミステリ。的確な描写,端正な仕上がりで安心して読むことができ,私はこういう作品に好感をもちます。といっても,樋口作品は,柚木草平シリーズの初期ぐらいしか読んでいないのですが。もっと売れて欲しい作家のひとりです。最近,創元推理文庫で復刊されたことをみても,マニア筋には評価が高いのかもしれませんね。

 半年前の大田区の本羽田のマンションで父親・母親・次女の親子三人が惨殺された。殺害状況から怨恨の可能性が高く,また大量の犯人の遺留品があったが,警察は捜査員百人以上の体制で捜査を行っても犯人がわれず,事件は膠着状態になっていた。

 そして,代々木公園の植え込みで女子高生の大間幹江が扼殺されて発見された。大間幹江は,親子三人殺人事件で生き残った長女である坂下美亜の友人だった。

 二つの事件に関連があるのではないかと感じた,新米女性刑事である吹石夕子は,偶然代々木公園で会った,元指導刑事で現在ホームレスの椎葉明郎に事件解決を手伝ってもらうよう依頼する。嫌々ながら捜査を始めた椎葉は,尋ねた美亜にも雇われる形にもなるのだが,坂下家には秘密があるようだった…。