ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『百番目の男』ジャック・カーリイ,三角和代訳,文藝春秋,2005(○)

百番目の男 (文春文庫)

百番目の男 (文春文庫)

 アメリカの新人作家のデビュー作。単純にいってしまえば,トマス・ハリス系譜につながるサイコ・サスペンス物。

 ストーリーはアメリカンベストセラーの強い影響を受けていてぎごちなく,おそらく文章もあまり上手ではありません。読んでいると,トマス・ハリスをはじめ,元ネタといえる作品が次々と浮かび,盛り込みすぎですね。文章も一度読んだだけでは理解しきれないところ多数あります。

 アメリカの南部アトランタ。主人公は市警察本部刑事PSIT(精神病理・社会病理捜査班)所属のカーソン・ライダーとそのパートナーのハリー・ノーチラス。ある日,頭部を切断された死体がみつかり,22歳の男性で男娼だった。その死体の陰部の上部には細かな小さい字で奇妙なフレーズが書かれてあった。さらに,同様に頭部を切断され,2行ほど細かな字で書かれた死体が見つかったのである。犯人は一体何故そのようなことをしたのか? カーソンたちは市警察本部との権力葛藤の中,兄の協力を得て犯人を突き止めるのだが…。

 しかし,誰もが驚く,ある仕掛けは特筆ものです。あまりにもくだらないので,それだけでも本作品の価値は大いにあります。まあ,ギャグというか,コントによくあるのですが,それをこのようなシリアスな作品に,ある意味パズル的に提示したのは素晴らしいといえるでしょう。