ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『歌うスカート』E.S.ガードナー,田中融二訳,ハヤカワミステリ文庫,1959→1979(○)

歌うスカート (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-17)

歌うスカート (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-17)

 ペリイ・メイスンシリーズ64作目で中期〜後期の作品。ハヤカワミステリ文庫では17番目(この文庫になっている作品とポケミスのままの作品のセレクトの差は何なのかな?)。文庫落ちしたということは,評判がよい作品ということなのでしょうか?

 ナイトクラブ<大きな納屋>では法律で許された賭博をする部屋があった。そのクラブ経営者ジョージ・アンクリタスとその部下スリム・マーカスは,歌手兼煙草の売り子をしているエレン・ロップにイカサマ賭けポーカーに協力するよう命令した。エレンはそれを断ると,ジョージらは現金を盗んだと濡れ衣を着せられて首になってしまった。そこでエレンは,彼らを訴えるためにペリイ・メイスンに弁護を依頼した。メイスンはあっけなくエレンの依頼を終えたが,その時,その賭博場で大損した男の妻がジョージらに金を返却するよう訴えた。メイスンは珍しい判例を挙げて彼女を弁護した。

 しばらくして,メイスンが弁護した女ナダイン・エリスがヨットの船室のなかで2発の銃弾を浴びて殺されたところを発見された。ナダインの夫のヘルマン・エリスと付き合っていたエレンがその容疑者として逮捕されたのだ。2発の銃弾の一つがエレンのもっていた拳銃から発砲されたものらしい。デラがエレンを弁護することを反対する中,メイスンは弁護を最後まであきらめないのだが,弁護し証拠をあげることが絶望的に思われたのだが…。

 トリックそのものは,なかなかのミスディレクションを見せますが,ちょっと強引かなと思わせます。2発の銃弾が別の二人から発砲されたと思わせつつ,実は一人時間差だったというのは,ちょっとやられたかな。まあ,そのトリックを成立させるために,いつもはしない行動をメイスンにとらせてしまったのは,いただけないので,悪くはない出来,といったところでしょうか。エレンに反感をもっていたデラが,メイスンに執拗に弁護を止めるよう提案していたのが笑えます。