ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『シスキユーの対決』リチャード・ホイト、浅倉久志訳、早川書房、1983→1988(△)

シスキユーの対決 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シスキユーの対決 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 『デコイの男』『シスキユーの対決』『ハリーを探せ』の三作品が訳出されているリチャード・ホイトの私立探偵ジョン・デンスンシリーズ第2弾。いわゆる軽ハードボイルド8割+エスピオナージ2割といった感じ。

 私立探偵ジョン・デンスンは、オレゴン州の渓流で有名なスチールヘッド(大型ニジマス)を狙って、胸まで水につかりながらフライ釣りをしていた。すると上流から丸太が流れてきたと思ったら、人間だった。あわてたデンスンは、胸の上までに水に浸かってしまい、流されてしまったが、その丸太かと思われた若い女性の死体につかまって、辛くも助かった。その女性は頭部を銃で撃たれ殺されていた。恩義を感じたデンスンは、殺人犯を捜す決意をしたのだが…。

 本書を読んでいるうちに、まったく忘れていた『デコイの男』の読後感を思い出しました。それは、まったくの退屈だということ。いや、退屈というよりも、今どんなストーリーを追っているかわからなくなってしまう感じ。まあ、そんな作品です。

 でも、本書の解説代わりの巻末の鏡明氏と翻訳者の浅倉久志氏の対談「誰も読んだことがない小説の解説」がめちゃくちゃ面白そうに紹介しているんですよねえ。騙しているわけではないんですけどね。まあ、すれっからしの超マニア向けの作品です。

鏡 誰も予想がつかない話って珍しいじゃない? ハードボイルドにしてもミステリにしても、出だしに何かがあって、それからだんだん収束していく物語じゃない。リチャード・ホイトの小説はいつもそうなのだけれど、途中まではなるほどね、と思いながら読むと、途中から、ちょっと待てよ、おい、っていう……いったい何を今まで書いてきたんだっていうところ、ない?(p333より)