ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『社交好きの女』レジナルド・ヒル、秋津知子訳、早川書房、1970→1983(○−)

社交好きの女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1389)

社交好きの女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1389)

■複雑な人間関係がからむ殺人

 イギリスのダルジール警視シリーズの第1弾にして、ヒルの処女作。カバー紹介には「イギリスの新本格派、話題の作家ヒルの記念すべき処女作」とあります。いわゆる1970年となりますと、謎解きミステリそのものを新味をどこでだしたら迷走していた時期ですね。同時期にコリン・デクスターやルース・レンデルというところでしょうか。ヒルは、キャラクターなんですかね。でも、イギリスの年輩の意地の悪い刑事って、誰が書いても、あまり区別ができませんねえ…。原著で読むと違いがわかるんですかねえ。

 ラグビーのオール・イングランドにも選出される可能性があった選手であったサムは、地域のラグビーのゲームで頭を打って帰宅した。たちまち気分が悪くなって2階のベッドで気を失っていた。4時間後起きて一階に行ってみると、妻のメアリーが客間の椅子に座って死んでいた。死因は、金属製の円筒形の器具による打撲で頭蓋骨骨折だった。

 ダルジール警視とその部下であるパスコー部長刑事は、状況からメアリーのことをよく知っている侵入者か、あるいはサムが犯人だと思い、近所とラグビー・クラブを中心に、関係者に聞き込みを始めた。すると、メアリーは社交的な女でラグビー・クラブに大勢の崇拝者がいたのだが、それは今でも続いてるのだった。また、メアリーの娘のジェニーを脅迫する手紙が見つかって…。

 トリックそのものも、それほど優れたものではないし、ストーリー運びも、状況設定が少なく、あまり親切ではありません。って、イギリスの小説っぽいですね。そうして、小さな地域の裏の人間関係が、少しずつ浮かび上がってきます。