ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『独白するユニバーサル横メルカトル』平山夢明、光文社、2006(○)

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

■人間のグロテスクな欲望
 読み手を選ぶグロ系ミステリ短編集(「グロ系」は別にけなしているわけではありません。エロがないのがよいですね)。ただ、本屋大賞の作品を喜々として読んでいる人には向いていないでしょうね。――それにしても、本屋大賞って、読者の人間性を試しているかのような作品ばかりで、辟易しますね。
 その対極にある作品ということで、いずれの作品も、霧や闇の中にいるような、見えるような見えないようなシチュエーションで始まり、だんだん奥へ進むにつれて、周りが見えてくると思ったら、ますます迷っていく感じがし、最深部になかなかたどり着きません。エンディングは、ハッピーなものはまったくなし。素晴らしい。ある意味、これこそがリアリズムというものですよ。
 と書きつつも、悲しいことに、ちょっと私にはハイブロー過ぎて、十全に理解できたという感じがしませんでした。
 作品は、「C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆」「Ωの正餐」「無垢の祈り」「オペラントの肖像」「卵男(エッグマン)」「すさまじき熱帯」「独白するユニバーサル横メルカトル」「怪物のような顔(フェース)の女と溶けた時計のような頭(おつむ)の男」の8編。表題作は、『レッドドラゴン』とを思い出しました。それよりもリアリティがありましたけど(というか『レッドドラゴン』にリアリティがないだけか)。あと、『コブラ』もね。