ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『編集者を殺せ』レックス・スタウト、矢沢聖子訳、早川書房、2005(○−)

編集者を殺せ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

編集者を殺せ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

■小説の原稿をめぐる連続殺人事件

 カバー紹介の「巨漢の美食家探偵シリーズ、屈指の名作」のコピーに惹かれて手にとったもの。もちろん本書は、ネロ・ウルフ・シリーズの中期の一つ。私は十代のとき『料理長が多すぎる』を読んだことがありますが、当時あまり面白いと思わず、あまり頁をめくる手が進みませんでした。私には合わない作風なんだなと判断したわけですが、もう年もとったし、ネロ・ウルフ・シリーズを味わうことができるようになったかなと試してみたかったこと、また同僚に熱心なネロ・ウルフ・シリーズのアーチー・グッドウィンのファンがいて、まあ感化されてしまったこと、それにタイトルに興味をもって読んだわけですが、残念ながら、味わうわけにはいきませんでした。のれず退屈してしまった。

 ウルフは私立探偵事務所を経営し、古い家を維持し、たくさんの蘭を育て、その蘭の世話係と、料理人、助手のアーチー・グッドウィン、3名の調査員を雇っているため、高額の依頼料以外は依頼を引き受けないという、まあクラシカルな設定となっています。行動や調査を他の人に任せるペリイ・メイスンといったところでしょうか。

 クレイマー警視が、法律事務所に勤めるベテラン事務員のレナード・ダイクスが川から水死体で発見された事件について、ウルフに相談に来た。ダイクスの家を家捜ししたところ、15名の名前を列記したメモが出てきたという。ウルフはけんもほろろに調査を断る。

 その数ヶ月後、車に轢かれて死んだ娘が実は殺されたので調査してほしいという依頼人が来た。彼は、娘は編集者をしていて、死んだ夜、小説の原稿を送ってきたベアード・アーチャーという男と会う約束になっていたという手紙を受け取っていたので、その男が殺していた、あるいは関係者ではないかという。

 そのベアード・アーチャーという名前は、クレーマー警視がもってきたメモの名前のリストに書かれていたことに気づいたウルフは、どちらの事件も殺人事件に違いないと考え、調査を引き受けた。アーチーと調査員たちは調査をしていくうちに、その原稿をタイプしたタイピストも殺されてしまった…。

 うーん、謎解きが後出しじゃんけんのような気がするなあ。よって、あまり評価できません。今まで翻訳されなかったのも、しょうがないかも。