ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『殺人交叉点』フレッド・カサック、平岡敦、東京創元社、1957→1972→2000(○)

殺人交叉点 (創元推理文庫)

殺人交叉点 (創元推理文庫)

■フランスの古典的なミステリ

 いわゆるフランスのサスペンスミステリ。正確にいうと日本でいえば折原一氏の作風にもっとも近い。もはや古典ともいえるものですが、まだ未読だったので。「殺人交叉点」「連鎖反応」の二つの中編が収録されています。

 それでまあ、結論からいいますと、これらの作品のネタは、さまざまな後発の作品のバリエーションとして使われているので、ああ、あの元ネタはこの作品か、と感じ、高校生ぐらいのときに読んでいたら、さぞや驚いたことだろう、というものでした。不満といえば、なぜ、このようなトリックを使ったのか、小説上でしか意味がないのではないか、ということですが、それが本作品の長所でもあるのです。

 とにかく、ダマす小説が好きな人にとっては、必読のミステリです。そして、このような人生のクソの役にも立たない、無駄としかいいようがないミステリが、私は好きなんですよ。