- 作者: ジェイムズエルロイ,James Ellroy,田村義進
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
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■アメリカの黒歴史を描く
例のごとく、人物描写がなく行動のみが記されているため、一体何のことを書いているのか分からず読むのに時間がかかりました。しかし、この感動と面白さは、エルロイからしか得られないため、我慢して最後まで読み切りました。
私的には、『ビッグ・ノーウェア』がもっとも好きで、巷に評判の『ホワイト・ジャズ』はよく面白さが分かりませんでした。あの体言止めと「/」で区切る独特の文体も、シノプシスを読まされているようで、もっと文章化できるんじゃないの、エージェントが出版を待ちきれなくてこれでいいと出版したんじゃないのと思ったぐらいです。
その次の『アメリカン・タブロイド』の評判はエルロイにしては、あまり高くなかったのですが、文庫で手にとったところ、これが傑作。緻密なプロット、最後に一つ一つのピースがはまっていく感じがあり、そうそうエルロイはこれでなくっちゃと見直したものです。
それで本作『アメリカン・デス・トリップ』ですが、あのエルロイ独特の大きな河の流れのなかに投げ飛ばされて、いまどこにいるのか分からぬまま、一つ一つのピースを読まされ、最後の悲劇までに運命のようにもっていかされます。しかし、いかんせん長すぎるのと、アメリカ近代史のベーシックな知識がない(例えば、ケネディ大統領の暗殺者の名前など)と、厳しいですね。
それでも、エルロイを読んだことない人は、『ビッグ・ノーウェア』『L.A.コンフィデンシャル』『ホワイト・ジャズ』『アメリカン・タブロイド』のどれでもよいから、読んでみるといいと思う。そうすれば、エルロイ作品からしか得ることができない感動を理解することができますから。
しかし、この解説を書いているたぶん編集者はすごいですねえ。なかなか、ここまで的確に迫力ある解説は書けないですね。