ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『崖の上のポニョ』感想

 ある映画批評のサイトで、期待はずれと書かれていたけど、その内容をみると、どうも内容を誤解しているだけで、むしろ良い映画なのかなと思って、池袋のレイトショーに行ってきました。

 それで、結論だけいうと、一回だけ見て傑作、名作とは断言できないけど、ひょっとしたら傑作じゃないか、名作じゃないかと思わせてくれる映画です。極めてシンプルなストーリーであるにもかかわらず、さまざまな矛盾点が観客に十全に理解させることを拒否しているからでしょう。

 これは、監督の宮崎駿氏の「リアル」の捉え方が、変化したからなのでしょう。おそらく、世界は辻褄の合うものではないというもので。

 気になったのは、今回の映画も諸星大二郎氏からインスパイアされているなあと感じたところ。『栞と紙魚子』のクトゥルーちゃん、団一致先生、クトゥルーちゃんのママがそれぞれ、ポニョ、フジモト、グランマンマーレになんとなく似ていますね。ポニョが波の上を走るところは、ほぼそのままような気がしますし。

 この作品は、宮崎的なものと諸星的なものが、うまく融合しバランスがとることに成功したものといえるしょう。途中から「これはポニョか、あるいは少年の夢の中なのかな」と感じる程、幻想的であり、それでいながら、「生への充足と歓喜」にあふれています。

 しかし、宮崎監督はまだまだ映画を作りそうですね。あの老人たちの「立たせる」描写には、めちゃくちゃ驚きました。まだまだ老いを受け入れてないじゃないですか。それとも、これは、宮崎監督の年代の人たちの特性なのでしょうか。