- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/12/06
- メディア: 文庫
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宮部みゆき氏の現代物。解説で杉江松恋氏がサムスン物に例えていたので手にとりました。ラストの後日譚ともいえそうなエピソードに思わず「うまいなあ」って唸ってしまいましたよ。「そうか、そういう酷薄で優しい視点をもつ作家なんだよなあ、宮部みゆきは」って。思えば、『魔術はささやく』からそうでしたからね。
巨大企業の今多コンツェルンの会長の11年間運転手だった梶田信夫は、一台の暴走する自転車に撥ねられ転倒し、歩道で頭を打って、脳挫傷で死亡した。自転車による轢き逃げ事件なのである。犯人は捕まっていない。
その会長は、今多コンツェルンの広報室に勤める編集者である会長自身の娘婿の私に、梶田の二人の娘が父についての本を作りたいという相談を受けるように頼んできた。私、杉村三郎は、姉妹に面談して、とりあえず引き受けた。
しかし、父について本を書くことに積極出来なのは妹の梨子で、姉の聡美は気が進まないらしい。その理由は、運転手以前の父は、誰も知らない危なっかしい過去があるらしいこと、それが原因で事故にあったのではないか、殺されたのではないかと考えているとのことだった。そう思う理由は、聡美の幼児期の誘拐事件にあるらしかった。
梨子の積極的な申し出を止めることができないと思った私は、聡美に運転手になってからのことを中心に記述することを約束し、梶田の事故現場に行ったり、過去を調べるのだが…。
なんて言うこともないネタなのですが、描写が繊細でストーリーテリングがあるため、このボリュームになったのでしょう。