ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『調べる技術・書く技術』野村進、講談社、2008(◎)

 短いものから長いものまで、身近なものから身近でないものまで、調べて文章にする、つまりノンフィクションの書き方を極めて分かりやすく説明したマニュアルで、このようなことを体系的に教えてもらってもいない、学んでもいない、観察して自己流にしていた私にとっては、非常に勉強になりました。役に立ちます。依頼状の文面もそのまま使えるようになっているし…。

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

調べる技術・書く技術 (講談社現代新書 1940)

 とくに面白かったところは、「事件を書く」の第7章。事件ノンフィクションの取材の方法について書かれています。茨城で5人の女子中学生が集団飛び降り自殺を図り3人が死亡した事件を、月刊誌の依頼を受けて、取材に向かってまとめるまでのノンフィクションとなっています。未知の場所でどのようにつっこんだ取材をするか。著者は「水先案内人」を探すといい、以下のように説明しています。

 水先案内人の適任者とは、ひとことで言えば「野に遺賢あり」と呼ばれるような人物である。その分野の表も裏もよく知っていて、一目置かれている。だが、そこにどっぷり浸かっているのではなく、どこか超然としたところがある。つまり、インサイダーでありながらアウトサイダーの視点も兼ね備えている。人柄がよく、出たがりでなければ、なおさら望ましい。言うまでもなく、その分野に幅広い人脈を持っている。(本書214頁より)

 うーん、なるほど、その通りと手を打ちました。そんな人簡単に見つからないと思われる方もいるかもしれませんが、結局はこれという人を見つけて、教えを請うことが大事ですよね。私も最近新しい分野を開拓せよといわれて、水先案内人を見つけるまでは時間がかかりましたが、見つけてからは結構うまく進行していますからね。

 ここを呼んだ時、昔のとりみきの短編「少年のための天才マンガ家入門」でギャグを探しに町の古老を探して聞きに行くというギャグを思い出し、あれは半分マジだったのかなと一瞬考えてしまいました。また、本章は、探偵が事件を探るような感じにも似ていて、それも興味深かったです。どうも、著者の思惑とは違うところをおもしろがってるな…。