本書は、2006年の第27回吉川英治文学新人賞受賞作。エンタテインメント職人作家・今野敏氏のファンを超えて受け入れられた出世作なのでしょう。私にとっては初めての今野敏氏であります。警察小説の傑作ということで手にとってみました。
- 作者: 今野敏
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/01/29
- メディア: 文庫
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警視庁の長官官房の総務課長の竜崎伸也は、ある足立区内の廃工場での銃による殺人事件が、広報の役割をもつ総務課に報告が来なかったことに不信をいだく。警視庁に行くと殺された者が、誘拐、監禁、強姦、殺人、死体遺棄事件の実行犯の一人だった。暴力団同士の抗争事件と思われたが、第2、第3の殺人事件が起こる。その殺人が起こった日から犯人は警察官の可能性があることがわかった。上から、他部署からは隠蔽するような動きがある。一方、竜崎の息子がたまたま麻薬を吸っていたところを見つけてしまう。同僚からは隠蔽すべきだとアドバイスを受けるのだが…。
いわゆる警察を舞台にした小説であり、事件や謎があり、それを探るというミステリ小説ではありません。それでも、『クライマーズ・ハイ』のような事件にまつわる稼業、といっても公務員ですが、その矜持をここまで上手く書ききった小説はないでしょう。ときに、劇画調ではありますが、一気に読ませてくれます。ペーパーバック小説の傑作です。