ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『絞殺魔に会いたい』パーネル・ホール、田中一江訳、早川書房、1989→1992(○+)

 スタンリー・ヘイスティングズ・シリーズの第4作目。私が読んだのは1995年11月発行の第4刷だから、結構売れたのかな? 相変わらずの軽ハードボイルド小説です。

絞殺魔に会いたい (ハヤカワ・ミステリ文庫)

絞殺魔に会いたい (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 事故専門のストーンズ・アンド・ローゼンバーグ法律事務所に所属する事故専門の調査員・スタンリー・ヘイスティングスは、ウィンストン・ビショップから調査の依頼が入り、自宅アパートに行ったところ、絞殺されていた。殺人課のクラーク刑事部長は、今回の絞殺事件は昨年起こった殺人事件とかかわりのある連続殺人事件ではないか、その共通点は、被害者は黒人男性、ハーレムの住人、ローゼンバーグ・アンド・ストーン法律事務所に電話して調査員派遣の依頼をしていることであるという。その事件は犯人が逮捕されているのだから、そんなことはないというのに。

 ところが、次の依頼人のフィンクルスタインのところへ訪れたところ、なんと絞殺されていた。しかし黒人ではなかった。連続殺人事件と確信したクラークは、犯人はリチャード・ローゼンバーグに恨みをもつ元依頼人ではないかと推理し、事務所の依頼人の情報提供を求めるとともに、スタンリーに刑事を監査役として付けることを要求した。刑事付きの探偵じゃあ仕事なんてできないと落胆したスタンリーだが、さらに絞殺殺人が起きる…。

 無差別連続絞殺殺人事件の犯人であると疑われたスタンリー。リチャード・ローゼンバーグ弁護士事務所のかかわる人物が犯人であると目星をつけた警察という構図。展開がひとつひとつ進むごとに、その都度推理を行い、それに基づき捜査をしていきます。

 決して傑作ではありませんが、一人称の探偵が事件を捜査するストーリーで、リーダビリティもあり、アガサ・クリスティばりの謎の提示とどんでん返しがあり、十分楽しめます。ハードボイルド小説にリアリティを必要と思わない私には、メチャメチャ楽しめました。こういうシリーズは貴重とすら思います。