弁護士ペリー・メイスン・シリーズ全82作中40作目の作品。だから中期ですね。先日読んだクーンツの『ベストセラー小説の書き方』では、お勧めの作家として、ガードナーを選んでいませんでしたね。謎解きミステリだったからでしょうか。
私は、以前からの、また今後のミステリの流れを読むためにも重要な作家だと思うんです。こんな軽妙なストーリーで、謎解きの要素はしっかりある、少しずつ現れる事実がサスペンスを醸し出す、そしてお馴染みの文学的に悩むことのないヒーロー像など、エンターテイメントの基礎がそろっています。
しかし、ミステリ小説のベスト10やベスト100などの候補作となるほどの代表作がないこと、そして犯人が複数であることが多いこと、がマニアに受けないんでしょう。残念ですね。
- 作者: E.S.ガードナー,峯岸久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976
- メディア: 文庫
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さて、本書ですが、シリーズ中、上位に位置づけることができる作品でした。もし現代に翻訳されれば、ベスト20〜30以内には挙げられるでしょう。偶然がメイスンを事件に導く発端、日記と窃盗と美女の失踪という複数の謎の提示、少しずつ解かれていく謎と新たな大富豪殺人事件、猿とゴリラを飼う豪邸に潜む秘密、そして、いつものシリーズと同様法廷で暴かれる真実、ある程度ミステリを読んでいれば解けるはずの古典的なトリック、論理的に解けていく謎など、盛りだくさんです。
本作品については、ちょっとした興味を持ちましたので、ネタバレありで細かいストーリーをおっていこうかなと思っています。