ディック・フランシス全41作中第3作目の作品。いわゆる名作。読むのは、おそらく3回目ぐらい。一度目は高校の時で、文字通り寝食を忘れてむさぼり読んだものです。同時のベスト10セレクトなどで、どうして本作が入らないのか訝ったものですね。今回再読して、なんとなく理解できましたが。それでも、やっぱり名作だなあ(その割に◎でないのは、ちょっと気分的なものです)。
今回は青森に出張中に読むものがなくなって、久々に名作をと現地で調達したもの。「味の札幌 大西」の「味噌カレー牛乳ラーメン」は美味かったです。
- 作者: ディック・フランシス,菊池光
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04/20
- メディア: 文庫
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ようするに本作は、男のためのハーレクインロマンス小説なんですね。文体、主人公の設定、自分を冒険へ連れて行く使者、与えられた使命、それを果たすための潜入と変身、自分を誘惑する女性、強烈なサスペンスなど盛りだくさん過ぎて、少し甘くいやらしく感じるほどです。
冒頭から、そのニオイが強く、読者としては辟易するほどなのですが、さすがにあの恐怖とサスペンスは読みながら思わず「あーっ」と叫んでしまうほどです。時代小説の『神無月十番目の夜』と同じですね。まあ、誰に勧めても間違いがない、エンタテインメントのフルコース的な作品といえるでしょう。
石川喬司氏の以下の解説がいいですよ。本当にイギリス冒険小説黄金期だったことがよくわかります。
「だけど、題材が競馬だということを抜きにしても、やはり傑作だよ。人物も、背景も、謎も、文章も、翻訳も、すべてが申し分ない。ストイックな男の世界を鮮やかに描ききっている。なぜこれがギャビン・ライアルの『深夜プラス1』に負けて、英国探偵作家教会最優秀賞の次席になったのか理解できないな。その前の年にはライアルの『最も危険なゲーム』をさしおいて、ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』が受賞しているが、これもおかしい」(376頁より)
でもなあ、ラストでダニエル・ロークは、金を受け取って欲しかったなあ。それでこそ、プロになる覚悟を感じるんですけどねえ。フランシスも若かったということでしょう。