ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『家庭モラル・ハラスメント』熊谷早智子、講談社、2008

 読売オンラインの「発言小町」が結構好きで時々読んでいます。メイン投稿者が2ちゃんなどとは異なり大人の女性が多く女性特有の考え方が、また、ほんの少しの情報から相談者の状況を推理していく過程が見られて面白い。時々傑作が見られることがあります。

 最近というか、ちょっと前でうろ覚えのことだけど、妻の他人に対する非常識な対応で困っている、非人間的ではないか、離婚を考えているという相談がありました。まあ、いろいろ具体的に状況を聞いていくと、どうやら発達障害らしく、数名がそれを指摘し、適切な相談施設に相談するようにアドバイスしているわけです。

 しかし、相談者は全くそれを無視して、別居したと報告します。しかも自分はここまで妻のフォローをしているのだと自分は素晴らしいのだというような感じで報告するのですよ。しかし、妻が発達障害で適切な対処をせず、そのまま何もせず別居・離婚をしたら、相談者こそ「非人間」ですよね。さて、相談者はどうするのかなと思っていたら、落ちてしまって残念だったのですが。こんな、相談者が自分自身の首を絞めてしまう相談が時たまあって好きなんですけどね。

 そんな、普通に発達障害についての情報が現れる「発言小町」なんだけど、時々現れるのが「モラル・ハラスメント」という言葉。そんな言葉を知らなかったから、ググってみたら、「外傷等が残るため顕在化しやすい肉体的な暴力と違い、言葉や態度等によって行われる精神的な暴力」(ウィキペディアより)という、セクハラやパワハラと近い概念でちょっと気になっていました。まあ、そんなとき手にとったのが本書。

家庭モラル・ハラスメント (講談社+α新書)

家庭モラル・ハラスメント (講談社+α新書)

 結婚直後から夫による精神的暴力を受けてきた著者が、モラル・ハラスメントの概念を知り、離婚調停を経て、離婚に至るまでの手記を通して、モラル・ハラスメントのことを分かりやすく解説しています。概念そのものは、インターネットなどで知っていたので、「まあ、こんなヤツいるよな」と感じつつも、わかりやすい表現なので読ませます。私は、これをパワハラの一種として理解しました。

 以下、気になったり気に入ったところを転載。

「モラル・ハラスメント(モラハラ)の被害者は、ほとんど例外なく体の不調を訴える。その多くは不眠、全身倦怠、頭痛、肩こり、腰の痛み、循環器の異常、激しい動悸、湿疹などであるが、血液系、免疫系の病気をもっている人も少なくない」(35〜36頁より)

「「モラ(モラル・ハラッサー)は突発性記憶回路障害」。…(中略)ハラッサーの特長である。平気で嘘をつき、さらに自分のついた嘘を本当のことだと信じ込む。事実をねじ曲げ、相手を攻撃する。それが嘘だという証拠を出してくると、逆ギレして暴れる」(42〜43頁より)

「私はアクションを起こすことを選択した。私自身もまた、自分の選択に、これから一生、責任を負っていくのだ」(129頁より)

「男の子は父親と対決します。成長して、父より体力が勝ってくると、子どもは父を負かします。刃傷沙汰になることもめずらしくありません。そのあと、父を捨てるんです。それが最高の復讐でしょう?」「それからどうなりますか?」「捨てられた男は野たれ死にするんです。そういう人、たくさんいますよ」