ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『依頼人がほしい』パーネル・ホール、田中一江訳、早川書房、1993

 控えめ探偵「スタンリー・ヘイスティングズ」シリーズ第5作目の作品。ちなみにパーネル・ホール氏のホームページをみると、長篇は全16作があるみたい。第15作の『MANSLAUGHTER』が2002年の発行で、ここまで日本の早川書房で購入できますと書かれていて、5年間おいて『HITMAN』が2007年に発行されているようですね。第1作目が1987年発行で20年続いているということは長いなあ。

 冒頭で「わたしは四十代も半ばをこえている」って意外な告白。何故かてっきり三十代だと思っていた。それでまあ、歯周病の治療代として3200ドルかかり、支払いに銀行ローンを組んでいるほど、借金に困っている。だから、どう考えてもまともじゃない怪しげな依頼にもお金のために引き受けなくてはならない。

 マーヴィン・ニクルスンと言う男が、浮気をして別居している妻を取り戻したいので、浮気男の身元を調べて欲しいという依頼にきた。浮気男のことを調べて、どうしようというのだろうという疑問をもちつつ借金に苦しむスタンリーは依頼を引き受ける。妻モニカの勤務先や自宅を尾行しても、それらしき男は見つからない。尾行を続けたところ、ある雪の日に、ちょっとした山のなかのモーテルにチェックインするモニカ。その夜、一台の車がやってきて、男とモニカは密会をしたらしいが、振り切られてしまった。しかし、翌日、モニカは銃殺されているところを発見された。

 その容疑者として逮捕されてしまったスタンリー。モニカを尾行していたはずだったが、警察によると、モニカではなく、ジュリー・スタインメッツというファッションモデルだった。どうやら、身元不肖の男が、身元不詳の女の尾行をさせるために探偵を雇い、実在の人物を使ったらしい…。不起訴になったスタンリーは、ニクルスンを探す。

 相も変わらず安定したシリーズで、安心して読めます。スタンリーは、弁護士事務所と契約している事故専門の調査員ですが、本作では借金のために、その調査員の仕事をしつつも、フリーの探偵として、それでいながら、フツーの控えめな人柄でどうにかこうにか事件を解決していきます。☆☆☆です。

依頼人がほしい (ハヤカワ・ミステリ文庫)

依頼人がほしい (ハヤカワ・ミステリ文庫)