ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『相棒 Season 7』「第10話 ノアの方舟」

 2008年12月24日、送電ケーブルの時限爆弾による断絶によって、港区、千代田区など東京都心で都市機能を麻痺させる停電が発生した。地球温暖化阻止を目的としている環境保護団体が、京都議定書を無視しているために行ったという声明文が出された。その環境テログループ「ジャッカロープ」は、以前、羽田空港コンテナ爆破を行ったテロリストであり、環境保護を盾に卑劣な破壊行動をくり返す連続テロ事件として報道されていた。

 法務大臣の瀬田は、息子の和也が失踪中であり環境テログループに関わっていないかと、小野田官房長官に相談してきた。息子がテロに関わっているとマスコミに知られたら、法務大臣更迭の好材料にされてしまうことを懸念していた。右京と元官房長補佐官で法務大臣の秘書の姉川のコンビで、和也の部屋を捜索すると、丁度フィールドワークに出かける準備をしていた痕跡があり、またパソコンのデータが消えていた。

 一方、法務大臣の長男がテロ活動に関わっている可能性があるとマスコミが報じた。一体誰がマスコミにリークしたのか? 右京は、和也が左利きにもかかわらず、右利きの者が腕時計を落としたことから、何者かが和也を犯人に仕立てるために、現場に和也の腕時計をおいたのではないかと推理する。

 瀬田の大学の研究室のパソコンから、鉄道テロ計画の声明文を思わせるメモとデータが見つかった。それによるとアジトに残されたメモ書きによると北新宿でテロが行われるという。右京は、同じメモ書きから横浜の港から出港する豪華客船を示している者であり、依頼人と犯人が落ち合う場所ではないか、その豪華客船では菱川コーポレーション主催のエコパーティが行われることがわかると、テロリーダーと依頼人が落ち合うのではないかと推理する。

 右京と姉川はパーティに参加し、メモ書きの部屋に乗り込んだところ、部屋の振り替えで別のパーティが行われていた。何人かいて誰がジャッカロープのメンバーであるかわからない。そのパーティの途中でデッキで根津という和也の同僚である大学非常勤講師が殺された。右京は、その殺人現場を見て「もう、犯人はわかっていますから」と犯人を逮捕するのだが…。また、この豪華客船に数発の爆弾を仕掛けたという脅迫電話が瀬田和也の携帯電話から警視庁にかけられたことがわかった。船の後部が爆破された。パニックになる船内。いったい、誰が仕掛けたのか?

 ミステリでは、ABCという連続殺人事件において、実はAとBとCの殺人事件の犯人が異なるというトリックはある。これは、その連続爆破事件版。そういう意味で、よくできているなと思わせる。また、エコを推進している企業の過去の罪、エコを利用した助成金の搾取など、動機そのものも上手いなと思う。しかし、いわゆる暗号トリックといえる、一つのメモ書きから、二つの解釈をさせる展開がいってしまえば強引すぎて、視聴者の興を冷ますものとなっており、一つひとつの道具立てはいいのだけれど、惜しい結果となっている。☆☆☆といったところ。