ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

 『泥棒は哲学で解決する』ローレンス・ブロック、田口俊樹訳、早川書房、1980→1995

 泥棒バーニイ・ローデンバー・シリーズの第4作目。バーニィ・シリーズは、主人公が泥棒とあって、ルパン三世のような比較的軽めの作品シリーズ。

 自ら経営する古書店でパーカーのスペンサー物を読んでいるところから始まる。

 私こと古書店経営者兼泥棒のバーニイは、キャロリンの値打ち物のコイン収集をしているコルキャノン夫妻が旅行に行っていて留守であるという情報をもらった。そこで夜11時30分頃、彼女と一緒にコルキャノン邸に忍び込んだ。しかし、先客の泥棒がいたらしい。それでも金庫から3つの品物を盗み出し、故買屋のクロウに品定めをしてもらった。そのなかの一つは、この世に5つしか製造されなかったV-ニッケル貨で競売にかけられれば50万ドルという代物だった。

 しかし翌日警察に殺人容疑で逮捕されてしまった。昨日、コルキャノン夫妻は午前零時過ぎに戻ったところで泥棒と出くわし、夫は縛られ、妻は殴り殺されたというのだ。バーニイはコルキャノン邸に行ったことを否定し、アリバイ工作をする。しかし、今度は故買屋のクロウが殴り殺されたのだ。

 クロウに預けたコインを探していると、見知らぬ男からコインが欲しいという電話がかかってきた。また、同時間に盗みに入っていた男が逮捕され、その姉に拳銃を突きつけられる。一体誰が犯人なのか?

 犯人そのものは、考えてみれば夫が犯人という基本的なトリックでしたが、3組の泥棒が同日に侵入するというコミックぶりに騙されてしまいました。あらすじ通り、軽妙洒脱で、それプラス、ブロックらしい過去に対するセンチメンタルな部分もあって☆☆☆というところ。

泥棒は哲学で解決する (ハヤカワ・ミステリ文庫―泥棒バーニィ・シリーズ)

泥棒は哲学で解決する (ハヤカワ・ミステリ文庫―泥棒バーニィ・シリーズ)

 しかし、本作はハヤカワミステリ→ハヤカワ文庫(1995)という流れですが、書店でも古本屋でもなかなか見つかりませんでした。1990年代以前に文庫化された作品が、ほとんど手に入りません。今は、2000年代が出回っていますが、翻訳作品は、いつでも手にはいると高をくくることなしに、見つけたときに購入しておかなくてはならないでしょう。