中国における日本のアニメ=動漫の大流行とその理由と影響がいかに大きいかを記した大著。著者は、1941年生まれで老人とも言える年齢で、400頁をオーバーする分量があるのですが、文章に癖がなくが上手いのでスルスル読むことができます。おそらく、こんな感想を書くことは失礼な行為にあたるのでしょうが、☆☆☆☆ぐらい興味深い現象が述べられているのですよ。
著者は、2008年時点で20代後半を頂点とする世代を「中国動漫新人類」と定義し、「彼ら中国の若者たちが日本動漫の影響を直接的間接的に受けて育った、これまでの中国人とはメンタリティの異なるまさに『新人類』だからである」(9頁より)としています。
というのは、「日本のアニメや漫画に描かれている、恋愛やセックス、友情、スポーツに音楽、はたまたファッションといった日常生活の楽しさ、リアルな消費の面白さ」(14頁より)があり、「こうした甘い蜜を少しでも味わってしまうと、欲望は後戻りできない」(14頁より)ので、大きな影響力をもつとしているのです。
そこで彼ら中国の若者たちには、社会体制との矛盾とどう両立していくか、が今後問われることになるでしょう。これはアイデンティティの問題であり、動漫だけではなく、中国以外の文化を吸収していくにあたり、すべての中国人に共通のものになるのではないかと思われます。
- 作者: 遠藤誉
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: 単行本
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